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ソニーのフルサイズミラーレスα7Rとα7のスペック比較

2013年10月16日 カメラ・写真
α7R

予想通り本日発表されたソニーのフルサイズミラーレス一眼「α7R・α7」。世界最小・最軽量のフルサイズミラーレス一眼の登場です。

フルサイズ(フルフレーム)イメージセンサーとは、約36*24mmサイズのイメージセンサーのことです。一般的なAPS-Cサイズカメラの約24*16mmと比較して、約2.25倍もの面積を持つ、巨大なイメージセンサーを搭載していることになります。
フルサイズイメージセンサー

市場推定価格は、α7R ボディ(ILCE-7R)が22万円前後、α7 ボディ(ILCE-7)が15万円前後と言われています。この市場推定価格には、10%ポイント還元を考慮しないのが一般的なので、ポイントカードのないカメラ屋で買えば、市場推定価格よりも10%近く安い価格で購入できるかと思います。

さて、気になるのは、α7Rとα7の違いです。Rが付くか付かないかで、なんと7万円も違います。この違いは一体どこから生まれてきているのでしょうか。スペック比較してみます。

1. 搭載しているイメージセンサーの違い

α7Rとα7の違いでまず大きいのは、搭載しているイメージセンサーの違いです。α7Rは約3640万画素の光学ローパスフィルターレス仕様のイメージセンサーが搭載されています。一方、α7は光学ローパスフィルター付きで約2430万画素のイメージセンサーが搭載されています。



どちらが優れてるの?という問いには、そもそも光学ローパスフィルターが一体何の役目をしているのかを理解しておく必要があります。ソニーの現行の"Exmor"CMOSセンサーは、ベイヤー配列のイメージセンサーが採用されています。このベイヤー配列には大きな欠点があって、縞模様や格子模様の被写体を正確に写そうとすると、原理的にモアレや偽色が発生してしまいます。モアレや偽色の発生を抑えるために、光学ローパスフィルターを取り付け、わざとボカして写していたのが今まででした(一般的なベイヤー配列以外のカメラについては富士フイルムX-E1レビューSIGMA DP2 Merrillレビューなど、[Z]ZAPAブロ~グ2.0:カメラ・写真カテゴリをご覧下さい)。近年では、イメージセンサーの高画素化が進み、レンズ性能が追いつかなかったり、ソフトウェア補正の技術が進んだり、実仕様においてはほとんど影響がなかったりで、光学ローパスフィルター機能を省く機種(ニコンD800Eなど)も出てきました。モアレなどの悪影響よりも、ローパスフィルターがないことによる解像感を重視するデジカメの登場です。

したがって、画素数が多ければ光学ローパスフィルターを省いても悪影響は少なく(ボカさないので、むしろ解像感が上がる)、画素数が少ないものには光学ローパスフィルターはあった方がいい、と考えられます。今回のα7Rとα7も、約3640万画素機種には光学ローパスフィルターを搭載せず、約2430万画素機種には光学ローパスフィルターを搭載しています。

で、どちらがいいの?と言われれば、他の性能や条件が全く同じなら、画素数の多いイメージセンサーの方が有利だと思われます。ただ、この後述べますが、他の性能や条件は全く同じではなく、それどころか画素数が多いことによる欠点も多々見受けられるのが現状です。一概にイメージセンサーの画素数だけを見て、どちらが良い、と決めることはできません。α7Rの方はギャップレスオンチップレンズ構造だったり、ダイナミックレンジや高感度性能なども、発売前の今の段階ではまだ評価することができません。

2. マグネシウム合金の使用量の違い

7万円の価格差でもっとも響いていると思われるのは、おそらくここでしょう。α7Rにはたっぷりとマグネシウム合金が使われています。


ソニー、ミラーレスカメラでフルサイズセンサー搭載の「α7R」 - デジカメ Watchより

どちらも、主要な操作ボタンやダイヤルにはシーリング処理が施され、メディア・ジャックカバー、各キャビネット部品も2重構造化されています。ボディ全体にわたって効果的なシーリング処理を施すことで、水滴やほこりが浸入しにくい防塵・防滴に配慮した設計になっています。

重さは、α7Rが約407gで、α7が約416g。高級な部材を使ったα7Rの方が9g軽くなっています。

3. 連続撮影速度の違い

連写派の人にとって気になるのが、連続撮影速度。残念ながら、α7Rの連続撮影速度はひどいことになっています。

α7Rの連続撮影速度は最高約1.5コマ/秒(速度優先連続撮影時 最高約4コマ/秒)です。それに対して、α7は最高約2.5コマ/秒(速度優先連続撮影時 最高約5コマ/秒)です。最近のデジカメとしては、α7でも厳しい速度ですが、α7Rの連続撮影速度1.5コマ/秒はかなりの遅さです。

連続撮影可能枚数も、α7がJPEG Lサイズ エクストラファインで69枚撮影できるのに対し、α7RはJPEG Lサイズ エクストラファインで25枚です。

上で、「他の性能や条件が全く同じなら、画素数の多い方が有利だと思われます」と書きましたが、連続撮影性能は全然違うので、扱いやすいのはα7の方と断言できます。

4. AFの違い

α7Rとα7には、ファストインテリジェントAFが搭載され、NEX-7と比較して1.6倍も速いコントラスト検出方式に進化しました。
ファストインテリジェントAF

一方で、NEX-5Rなどに搭載されていた位相差検出方式とコントラスト検出方式を組み合わせた高速なファストハイブリッドAFが使えるのはα7のみです。α7RはファストハイブリッドAFが使えません。フォーカスエリアや動体予測にも違いがあります。AF性能はα7の方が優れています。

5. 電子先幕シャッターの違い

α7Rとα7は、シャッター速度が最速1/8000秒となり、プロ用一眼レフ並みの超高速シャッターが切れるようになりました。

タイムラグをなくすための革命的な機能の電子先幕シャッター(NEX-7では電子先幕シャッターが搭載されて、従来の5倍速になっていた機能)については、なんとα7Rには搭載されていません。困ったことに、利用できるのはα7のみです。α7Rは連続撮影速度も遅いことから、のんびり撮るカメラということになりそうです。

6. フラッシュ同調速度の違い

フラッシュ同調速度にも違いがあって、α7Rは1/160秒、α7は1/250秒。α7の方が優れています。

表. α7Rとα7スペックの主な違い

α7Rとα7で気になるスペックや、異なる箇所を下の表にまとめてみました。

  α7R α7
撮像素子 35mmフルサイズ(35.9×24.0mm)、"Exmor"CMOSセンサー 35mmフルサイズ(35.8×23.9mm)、"Exmor"CMOSセンサー
カメラ有効画素数 約3640万画素 約2430万画素
記録画素数
(縦横比3:2)
35mmフルサイズ時 Lサイズ: 7360 x 4912(36M)
APS-C時 Lサイズ: 4800 x 3200(15M)
35mmフルサイズ時 Lサイズ: 6000 x 4000(24M)
APS-C時 Lサイズ: 3936 x 2624(10M)
記録媒体 ”メモリースティック PRO デュオ”、”メモリースティック PRO-HG デュオ”、”メモリースティック XC-HG デュオ”、SDメモリーカード、SDHCメモリーカード(UHS-I 対応)、SDXCメモリーカード(UHS-I 対応) 同じ
検出方式 コントラスト検出方式 ファストハイブリッドAF(位相差検出方式/コントラスト検出方式)
測距点数 25点(コントラスト検出方式) 35mmフルサイズ時:117点(位相差検出方式)APS-Cサイズ時・99点(位相差検出方式)/25点(コントラスト検出方式)
フォーカスエリア マルチポイント(25点(コントラスト検出方式))/ゾーン/中央重点/フレキシブルスポット(S/M/L) マルチポイント(117点(位相差検出方式)/25点(コントラスト検出方式))/ゾーン/中央重点/フレキシブルスポット(S/M/L)
その他の機能 フォーカスロック 動体予測、フォーカスロック
ISO感度 静止画撮影時:ISO100-25600(拡張ISO50)、AUTO (ISO100-6400)
動画撮影時:ISO200-25600相当、AUTO(ISO200-6400相当)
同じ
EVF 1.3cm(0.5型)電子ビューファインダー 2,359,296 ドット 同じ
液晶モニター 7.5cm(3.0型) TFT駆動 921600ドット 同じ
ピント確認機能 ●MFアシスト (35mmフルサイズ時 7.2x,14.4x
APS-C時 4.7x,9.4x)
●MFアシスト (35mmフルサイズ時 5.9x,11.7x
APS-C時 3.8x,7.7x)
ピーキング ● (高/中/低/切)(色:赤/黄/白) 同じ
電子先幕シャッター なし ●(入/切)
シャッター 電子制御式縦走りフォーカルプレーンシャッター 同じ
シャッター速度範囲 静止画撮影時:1/8000-30秒、バルブ、
動画撮影時:1/8000-1/4(1/3ステップ)、AUTO1/60まで、オートスローシャッター1/30まで
同じ
フラッシュ同調速度 1/160秒 1/250秒
外部フラッシュ αシステムフラッシュ (マルチインターフェースシュー対応、オートロックアクセサリーシュー用のフラッシュに対応) 同じ
連続撮影速度 最高約1.5コマ/秒、速度優先連続撮影時 最高約4コマ/秒 最高約2.5コマ/秒、速度優先連続撮影時 最高約5コマ/秒
連続撮影可能枚数 速度優先連続撮影時:JPEG Lサイズ エクストラファイン 15枚
連続撮影時:JPEG Lサイズ エクストラファイン 25枚、速度優先連続撮影時:JPEG Lサイズ ファイン 18枚
連続撮影時:JPEG Lサイズ ファイン 200枚、速度優先連続撮影時:JPEG Lサイズ スタンダード 18枚
連続撮影時:JPEG Lサイズ スタンダード 200枚、速度優先連続撮影時:RAW 14枚
連続撮影時:RAW 21枚、速度優先連続撮影時:RAW+JPEG 13枚
連続撮影時:RAW+JPEG 17枚
速度優先連続撮影時:JPEG Lサイズ エクストラファイン 50枚
連続撮影時:JPEG Lサイズ エクストラファイン 69枚、速度優先連続撮影時:JPEG Lサイズ ファイン 77枚
連続撮影時:JPEG Lサイズ ファイン 200枚、速度優先連続撮影時:JPEG Lサイズ スタンダード 80枚
連続撮影時:JPEG Lサイズ スタンダード 200枚、速度優先連続撮影時:RAW 25枚
連続撮影時:RAW 30枚、速度優先連続撮影時:RAW+JPEG 23枚
連続撮影時:RAW+JPEG 27枚
使用電池 リチャージャブルバッテリーパック NP-FW50(NEXシリーズと同じ) 同じ
静止画撮影可能枚数/時間 ファインダー使用時:約270枚
液晶モニター使用時:約340枚
(CIPA規格準拠)
同じ
質量(g)(バッテリーと”メモリースティックPROデュオ”含む) 約465g 約474g
質量(g)(本体のみ) 約407g 約416g
外形寸法 約126.9(幅)x94.4(高さ) x 48.2 (奥行き)mm 約126.9(幅)x94.4(高さ) x 48.2 (奥行き)mm
付属品 リチャージャブルバッテリーパック NP-FW50、ACアダプター AC-UB10、ショルダーストラップ、マイクロUSBケーブル リチャージャブルバッテリーパック NP-FW50、ACアダプター AC-UB10、ショルダーストラップ、マイクロUSBケーブル

その他

その他、α7Rとα7の良いところをあげておきます。
・握りやすいグリップ付きで、ホールド感が良い(おそらく)
・露出補正ダイヤルが付いて、従来のNEX機(NEX-7を除く)よりも操作性が改善
・前ダイヤル、後ダイヤルの搭載で操作性向上
・カスタムボタン1、2、3搭載
・Fnボタン搭載と、新しいユーザーインターフェース、クイックナビプロ
・コントラスト比が従来の約3倍のXGA OLED Tru-Finder
・上方向に約90度、下方向に約45度まで角度を調節できるチルト可動式液晶モニター
・ソニー独自ではなく、一般的なマルチインターフェースシュー採用
・NFCの搭載によるワイヤレス通信機能
・Wi-Fi対応ワイヤレス通信
・PlayMemories Camera Apps対応
・レンズ補正アプリでマウントアダプターによるオールドレンズの楽しみ
・瞳だけにオートフォーカスする「瞳AF」機能
・16bit画像処理 / 14bit RAW出力対応
・音質にもこだわった音声記録用ステレオマイクと再生用スピーカー(モノラル)
・音声レベルメーター&レベルコントロール機能
・音質を高精度にモニターできるヘッドホン端子
・バッテリーが従来のNEX機と同じNP-FW50
・防塵防滴
・Eマウント継続により、既存のAPS-C用レンズで自動クロップ撮影可能
・APS-Cサイズ撮影を「切」に設定すると、クロップしないで撮影することも可能
・わかりづらく操作しにくかったNEX系のメニューから、操作しやすいRX系のメニュー構成に変更
・飛行機モードの搭載
一方で、NEX-7と比較して悪くなったのは、
・内蔵フラッシュがなくなってしまった
・シャッターボタンの位置が悪くなってしまった
・連写速度がダウンしてしまった
くらいです。フルサイズ化によるボディサイズやデザイン、価格の変更を除けば、ほとんどのスペックにおいて進化しているように見えます(タイムラグなどのレスポンスは、実際に触ってみないとわかりませんが)。イメージセンサーのサイズが変わったとは言え、ミラーレス一眼の技術はしっかりと受け継がれているようです。

まとめ:α7Rとα7はどちらがオススメか

α7Rが22万円前後、α7が15万円前後であれば、間違いなくオススメはα7の方です。α7Rは、画素数の多いイメージセンサーが搭載されているものの、連写速度の遅さ、AFやシャッターの中途半端さなど、安いα7に劣る点も見受けられます。「ローパスレスの高画素機が今すぐ必要だ!」という人以外は、α7の方が安くて、機能面でも優れていて良いと思います。α7Rはまだまだ未完というイメージを受けます。

あとは、レンズの方に予算を残しておいて下さい。今回、同時に5本のレンズが発表されました。そのうち3本はZEISS銘のレンズで、ブランド料が高いです。手ぶれ補正なしの55mm F1.8が103,950円、35mm F2.8が88,200円です。平凡なスペックの割に価格が高いので、レンズを買う予算を残しておくか、タムロンやシグマから安いレンズが出るまで待つか、マウントアダプターで対応するか、NEX用レンズをクロップして利用するか、うまくやりくりする方法を考えた方が良さそうです。

自分は、価格が落ち着いたら、α7の方を買おうかと思っています(買う前に実機を触ってみて、ダメだと思ったら買わないかもしれませんが)。NEXシリーズで気に入っていたのは、電子先幕シャッター、ファストハイブリッドAFなどのレスポンスの良さでした。それらが使えないα7Rは購入対象になりません。デザインについては、NEX-7のデザインが気に入っていたので、それが踏襲されていなくて最初はガッカリしましたが、α7Rとα7のデザインもそれほど悪くないな、と思っています。何度も見ているうちに慣れて、むしろ格好良く見えてきました。念願のフルサイズミラーレス一眼なので、実物を触るのがかなり楽しみです。


追記1ソニーα7を注文した。その理由とは…
追記2やったー、ソニーα7届いたー(泣)
追記3やったー、今度こそソニーα7届いたー(本物)
追記4やったー、またまたソニーα7届いたー(三度目)
追記5α7レビュー1 - 唯一シャッターだけがややイマイチ
追記6α7Rのタイムラグは、安価なα7より8倍以上ある!遅い…
追記7α7レビュー2 - ISO感度別ノイズテスト
追記8ソニーα7、NEX-5R、RX100のサイズ比較、画像比較
追記9アマゾン限定「SDSDXPA-032G-JAZ」を購入。95MB/sの威力は?
追記10α7で手ぶれ補正の効かないレンズがある理由が判明
追記11ソニーα7Rとα7のマウントがふにゃふにゃな件

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