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ソニーNEX-7レビュー

2013年08月21日 カメラ・写真


去年の年末に、「シグマ 19mm F2.8 EX DN」と「シグマ 30mm F2.8 EX DN」が2本セットで2万円以下で投げ売りされていて、「シグマの最新単焦点2本が2万円でお釣りが来る!」と、思わずレンズ2本衝動買いしてしまいました。

問題はカメラの方をどうするかということでした。マイクロフォーサーズ用だとAPS-Cサイズに最適化されているシグマのレンズを最大限には生かせないので、これはソニーのNEXシリーズを買うしかないなと。

ソニーのミラーレス一眼は、以前安かったという理由で「NEX-C3」を買って試してみたことがありました。残念ながら、NEX-C3は予想以上にダメダメでした。定評のあるソニーの1600万画素イメージセンサーを積んでいて、他の機種と変わらない高画質のはずなので期待していたのですが…なぜかISO100で撮影できないとか、プラスチックで質感が悪いとか、ボディバランスが悪いとか、ボディが滑って握りにくいとか、間違ってメニューボタンを押してしまうとか、シャッターレスポンスが悪すぎるとか、ボタンが効かなくなったりとか、写り以外の部分で使っていて楽しくないカメラでした。

ならば今度は、NEXシリーズの最上位機種を買ってみようかと。試しに、フラッグシップのNEX-7を買うことにしました。最上位機種であるNEX-7でダメだったら、もうソニーのミラーレスはいらないかなという思いで購入しました。

一応、「α77/NEX-7体験撮影会&セミナーに参加してみた」のときにNEX-7を借りて、多少使い勝手はわかっているつもりでした。そのときの感想は「2400万画素でノイズが多いなぁ…」というものでした。JPEGで撮影していて、ノイズリダクションがかかって処理が遅かったりとか、すぐに感じた不満がありました。でも実際に、自分でもっと使い込んでみないとわからないかなと思って、NEX-7を買ってみたわけです。今年2月の「5年連続シグマのエビフライを撮ってきた」などの写真が、NEX-7にシグマのレンズを付けて撮影した写真です。


結果、期待以上にNEX-7はすばらしかったです!


そして期待を下回る弱点も多々見受けられました。

ということで、ソニーNEX-7のレビューでもしてみます。

NEX-7のボディサイズが最高!



NEX-7の何が好きって、結局はボディそのものに尽きます。ボディサイズが最高です。NEXシリーズは、最初にNEX-5が登場して、そのサイズと挑戦的なデザインに感動しました。NEX-5はマウント部よりも小さいボディのデザインが格好良い一方で、レンズ交換式カメラとしてレンズ交換を楽しむのであれば、小さすぎて扱いにくい弊害も出てきます。小さいレンズを付けるならNEX-5系、レンズ交換を楽しむならNEX-7系と自分では思っています。NEX-7は、ボディの高さがちょうど良く、ボディの厚みは薄く、ボディの横幅もちょうどいい感じです。NEX-C3の場合は、横幅が狭すぎて、右手親指を伸ばすと間違ってメニューボタンに触れてしまうという欠点がありました。NEX-7くらいの横幅だと、ちょうどいい感じです。右手親指の置き場にも困りません。ちょうどいいかどうかは個人の手のサイズによりますが、自分の手にはこのサイズが最高です。

ボディデザイン、質感がいい!



それから、NEX-7はボディのサイズだけでなく、デザインや質感もいいです。使っていて気持ちよくなるのは、マグネシウム合金のおかげです。プラスチック製のカメラとは、使っていて感触が違います。マグネシウム合金の軽量性と堅牢性で、使っていて気持ちいいです。ボディ上部は金属でツルッとしていて、最初は「シボ加工の方が好きだな」とか思っていたのですが、使っているうちに直線的な金属感にも愛着が出てきました。

グリップがすばらしい!



NEX-7で何よりいいのは、このグリップです。「手に吸い付くような質感を生むためにゴム素材を採用。背面には親指を置くスペースを確保し、グリップ感をさらに高めています」と公式ページに書かれているように、このグリップは最高です。適度なサイズがあり、ゴムで滑らず、ガッチリ握れます。ニコンの一眼レフに慣れていると、こういうグリップが最高に使いやすいです。「背面には親指を置くスペースを確保」と書いてあるくらいなので、NEX-C3系のボディ背面が窮屈なことを、ソニー公式でも認めているのでしょうか。NEX-7の場合は、前も後ろも握りやすいです。



こうやってバッテリーを縦に入れる形式、頭が良いです。縦に入れると、ちょうど握りやすいグリップの形状になります。ニコンの一眼レフとかもこういう方向に挿入する形式です。ミラーレスカメラの場合は、薄さ優先でグリップが軽視される傾向にあるので、もっと他メーカーもグリップにこだわってもらいたいです。

トライダイヤルナビの発想がいい!



革新的なインターフェース「Tri-Dial Navi(トライ ダイヤル ナビ)」。この3つのダイヤルによって、やっと、シャッタースピード、絞り、ISO感度の3項目を独立したダイヤルで設定することができるようになりました。写真の明るさを決める要因として、被写体の明るさが決まっていれば、残りはシャッタースピード、絞り、ISO感度の3つだけで決まります。たった3つの項目を変更するだけです。ですから、これらは簡単に変更できるようにすべきだと自分は思っています。絞り優先モードであれば、シャッタースピードが自動で決まり、代わりに露出補正の設定が増え、残りは絞りとISO感度になります。結局3つの項目です。NEX-7のトライダイヤルナビの場合、モードに応じて、3つの項目を独立したダイヤルで設定できるので、非常に使い勝手が良いです。たとえばこれがNEX-5Rとかだと、絞り優先モードにしてダイヤルを回しても一切反応せず、一度ボタンを押して露出補正モードやISO感度変更モードに入ってからでないと変更できません。パナソニックの場合は、ダイヤルを一回押して、露出補正と絞りを切り替えないと変更できません。ミラーレスカメラはなぜか露出補正がしにくい機種が多いです。NEX-7のトライダイヤルナビなら、露出補正どころか、ISO感度もそのままダイヤルを回すだけで設定できるので使いやすいです。マニュアルで、シャッタースピード、絞り、ISO感度をすべて自分で決めながら撮影できるのは楽しいです。

電子先幕シャッターでレスポンスがいい!

NEX-7には、高速レスポンスを実現させる、「電子先幕シャッター」機能が搭載されています。これにより、レリーズタイムラグが0.02秒です!レリーズタイムラグだけを見れば、もはやプロ用一眼レフカメラよりも速いです。ただ、ミラーレスカメラの場合は、遅延なしの光学ファインダーが付いていないので、背面液晶や電子ビューファインダーの遅延分、一眼レフカメラよりも遅くなります。それを含めても、NEX-7は感覚的に非常にレスポンスが速いです。「ミラーレスはレスポンスが遅い」と思っている人がいたら、それは間違いです。メーカーによってはかなり速いです。NEX-7の場合は、シャッターレスポンスが速く、撮影後もすぐライブビュー画面に戻るので、かなり使いやすいです。しかも電子先幕シャッターにより、シャッター音が静かなのも嬉しいところです。

簡易バウンスできるフラッシュ内蔵もいい



NEX-7は、小型軽量でありながら、フラッシュも内蔵されています。EVFやフラッシュが付いているのに、NEX-7は軽いです。重くならないのなら、いろいろ付いてくれていた方が助かります。しかもフラッシュは、これがなかなか使い勝手が良い代物です。



このように手で押さえれば、上向きに発光させることも可能だからです(動作保証外です)。こういうタイプの内蔵フラッシュは好きです。

ただし、外付けフラッシュの規格は最悪です。NEX-7では、なぜか一眼レフ用の「Aマウントカメラ」と同じ「オートロックアクセサリーシュー」が搭載されています。このあと発売されたNEX-6には、「マルチインターフェースシュー」が搭載されました。NEX-5系はまた違った接続形式で、この短い期間でEマウントには3つの外付けフラッシュ規格が登場したことになります。さすがに増えすぎです。

チルト可動式液晶モニターは…



チルト可動式液晶モニターは、「TruBlack(トゥルーブラック)ディスプレイ」技術とLEDバックライトが採用されています。多層膜コーティングARコートを施した液晶本体は、以外と擦れに弱いみたいで、すぐに「SONY 液晶保護セミハードシート PCK-LM1EA」を付けました。セミハードシートなので強く、純正で一体感も高いのでオススメです。

チルト可動式で、ローアングルやハイアングルにも強い構造なのですが、晴天屋外は…見づらいです。ハード的に見にくいのではなくて、ソニーのソフトウェアの処理上、見にくいです。モニターの明るさはオートで変わるように設定できます。明るい場所に行くと、明るくなります。明るくなるだけなら最高なのですが、なぜかコントラストや彩度まで変わってしまって、液晶をパッと見ても露出がつかめません。この後出たNEX-5Rでは、オートで明るさが変わる機能は廃止されていますし、液晶表示のプログラムを改善してもらいたいです。

ふいに撮影が始まるMOVIE(動画)ボタン



間違って動画撮影が始まらないように、この位置にMOVIE(動画)ボタンがあります。「この位置なら間違って押してしまうことはないだろう」と思っていたら、勝手に録画が始まっていることがありました。何度も。見かけと違って、意外とこの配置はよくありませんでした。ボタンの押し込み具合も良くなかったのかもしれません。ユーザーからの不満があまりにも多すぎたのか、録画禁止モードがアップデートで追加されました。録画禁止モードにしておくと、いざというときすぐに動画撮影できないので、このボタン配置は大失敗だったと思います。

電子ビューファインダーが使い物にならない



NEX-7が高価である理由の一つが電子ビューファインダー。NEX-7には、XGA有機ELを採用した、約235万ドットの高解像度・高コントラストの電子ビューファインダー「XGA OLED Tru-Finder(トゥルーファインダー)」が搭載されています。これが全くダメでした。まっすぐ覗くと235万ドットでなかなかキレイなのですが、視線が少しズレると、画面周辺部がにじみとゆがみで非常に見づらくなります。常にまっすぐ覗いていないといけないのでかなり疲れます。メガネをかけたまま使えるような電子ビューファインダーのレベルには到達していません。それならばと、アイキャップを外して直接覗いてみました。NEX-7には、EVF/LCD切り替えボタンが付いていないので、外光センサーによって自動で表示が切り替わります。アイキャップを外すと、上から外光が差し込んできて、EVFで見ようとしているのに、勝手にLCD表示に切り替わってしまったりして、結局使い物になりませんでした。売りのはずのEVFが全く使い物にならないとは、かなりの期待外れでした。

ダイナミックレンジは広いが、ノイズがきつい…

NEX-7には、2400万画素のソニー製イメージセンサーが搭載されています。APS-Cサイズに極小ピッチの2400万画素。気になるのは、極小ピッチによるダイナミックレンジ、色再現性、ノイズの悪化です。

撮影してみてすぐわかったのは、極小ピッチにも関わらず、「ダイナミックレンジは広い」ということ。とくにハイライト側の粘りは予想以上で、ピッチが狭くなってもソニーの技術ならダイナミックレンジは確保できることがわかりました。ISO100で撮影した場合、ハイライト側の描写は定評のあるソニー1600万画素センサーよりも良好に感じました(NEX-5Rと比較した場合)。

ただし、ISO感度を上げていくと、目に見えるほどノイズが増えていきます。特にシャドウ側の階調性がどんどん失われ、ハイライト側にもノイズが乗ってくるのが非常につらいです。ISO100で撮る場合は広いダイナミックレンジと2400万画素の高画素がフルに発揮されますが、ISO400以上の感度で撮影するなら1600万画素センサーの方がずっと扱いやすく感じました。現に、この2400万画素センサーはNEX-7の1機種だけで、後から発売されたカメラにはすべて古い1600万画素センサーの方が採用されています。

買ってすぐ、試しに青空をISO400で撮ってみたら、本当にガッカリしました。青空がまだらになってしまって。ノイズが多すぎて、美しい青空が台無しでした。処理の遅いノイズリダクションをかけても、まだらは消えず、ただ解像感だけが落ちて、ダメダメでした。しかも、NEX-7のISO感度設定は、1/3ステップずつの感度変更ができず、1段階ずつのみ。ISO100の次は、ISO200。その次はISO400…と、1段ずつしか変更できません。1段増感するごとに大幅にノイズが増えるこのセンサーに、このシステムはないなと思いました。

参考までに、曇りの日に撮影したISO感度別画像を上げておきます(画像をクリックすると、等倍で表示されます)。

■ISO100

シグマ 30mm F2.8 EX DN」を付けて絞り開放で撮影した写真です。絞り開放にもかかわらず中央は恐ろしくシャープで、こういう高性能な単焦点を付けてISO100で撮影すると、NEX-7の良さがフルに発揮されます。


■ISO200

右の建物の壁面や右上のガラスを見てもらうとわかりやすいですが、ISO100と比べてノイズが増えてきました。許容範囲で問題はありません。


■ISO400

同様に右側を見てもらえばわかりますが、かなりノイズが増えてしまいました。「なるべくISO400は使いたくない」、そう思わせてくれるセンサーです。暗い部分のノイズだけでなく、明るい部分にもノイズが乗ってくるのが非常につらいです。


■ISO800

ノイズが増えて解像感も落ちてきました。


■ISO1600

さらにノイズも増え、色も薄くなってきました。ただ、ISO1600ともなると、他の機種でもノイズが多いので、ノイズリダクションをかけたり、2400万画素を活かして縮小することも可能なので、割と使える範囲かと思います。


■ISO3200

ISO3200でこれなら、まぁ別にありなんじゃないかと思います。


■ISO6400

ノイズが増え、解像感が落ち、色も薄くなりました。これは緊急用という感じです。


NEX-7のノイズレベルをまとめると、ISO100はすばらしい、ISO400〜800は残念、ISO1600〜3200はまぁこんなもん、という感じです。高感度ノイズというよりも、ISO400辺りの画質が納得できるレベルに達していません。非常に惜しい感じのセンサーです。ISO100で風景を撮るなら2400万画素、ISO400以上で日常的に使うなら1600万画素の方が使いやすいと思いました。一長一短ありなので、新しいセンサーの開発が待たれます。

ソフトウェア周りがチグハグ

ハードウェアのセンスはすごいのに、ソフトウェア側がそのセンスに追いついていなくて、なんだかチグハグです。ソニーの機器に割とよくあるような気がしているのですが、NEX-7もソフトウェア側の完成度がイマイチです。

・トライダイヤルナビの発想はすごいのに、ところどころ機能が被っていてまだ未完成。
・ダイヤルを回すと、電子式なので、若干のラグがあってストレスがたまる。
・背面液晶に水準器とヒストグラムの同時表示ができなくて、イライラ。
・ナビゲーションボタンとカスタムキーが場所によって設定できる項目が違っていて困惑。
・メニューの構造がわかりづらく、目的の項目を探すのに時間がかかる。
・ISO感度を1段階ずつしか切り替えられないアホなシステム。
・液晶の明るさを変えるとコントラストまで変わって見にくいライブビュー。
・画像プレビューの拡大が遅い。
・動画と静止画のプレビュー切り替えが面倒。

ナビゲーションボタン、AELボタン、ピーキング表示、電子水準器など優れた機能もたくさんあるものの、イマイチ統一感に欠けるソフトウェア周りでした。

NEX-7が発売された後に他機種で追加された機能や改善されそうな点を列挙すると、Wi-Fi、アプリ、ノイズ改善、ホットシュー、ファストハイブリッドAF、タッチパネルなど、次機種で盛り込めそうな機能が驚くほどたくさんあります。ソフトウェアの改善とともに、もっとパワーアップを期待したいところです。

まとめ

NEX-7は実際に自分で買って使ってみて、予想以上に自分の手にフィットして、使っていて楽しいカメラでした。改善ポイントも多々見受けられたものの、いいカメラであることは間違いないです。予想以上に気に入りました。



もう何ヶ月も前にとっくに手放しましたけど。








追記1ソニーNEX-5Rレビュー
追記2ソニーα7、NEX-5R、RX100のサイズ比較、画像比較