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新型コロナウイルスで日本人は42万人も亡くなってしまうのか

2020年04月27日 雑記
日本で緊急事態宣言が出されてから、今日で20日になりました。

4月15日には、「行動制限なしなら42万人死亡 クラスター班の教授試算 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル」という報道がされて、驚いた方も多いかと思います。これはもちろん、「行動制限をまったくとらなければ」という前提付きです。

新型コロナウイルスに対して何の対策もとらなかった場合のシミュレーションは、4月9日にこのブログでも出しています。安倍首相が「(現状の)5日で2倍のペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1カ月後に8万人を超える」という発言を元に出したシミュレーションのグラフがこれです。
感染者予測
図1:東京の1ヶ月後の新型コロナウイルス感染者数予測(何も対策しなかった場合)
東京の1ヶ月後、2ヶ月後の新型コロナウイルス感染者数予測より

もちろん、「何も対策しなかった場合」であり、実際には日本で週末外出自粛要請やその他さまざまな要因もあり、このような伸びにはならないとわかっていた上での最悪の想定です。

そういう何もしなかった場合のシミュレーションを、北海道大学の西浦博教授が発表したことには少々驚きました。「驚かせるのは良くない」と考える人が多い中で、思い切って最悪の数値を発表したからです。「日本人42万人死亡」。最悪のシミュレーションだけを発表しては無責任とも言えますが、西浦教授はしっかりと解決策を示しました。それは、「人と人との接触を8割減らすことで感染者数を急速に減らせ、結果として重篤者や死者の数も減らせる」です。この確固たるシミュレーションにより、感染者数を減らせると予測できたからこその発表だったと思います。


さて、その後の日本の新型コロナウイルス感染者数の変化はどうなっているでしょうか。日本で緊急事態宣言が出されて20日で、そろそろ緊急事態宣言の効果が出てくる頃です。緊急事態宣言を出しても、ただちに効果が出ないのは、今(4月7日時点で)、東京に何人の新型コロナウイルス感染者がいるかに書いたとおりです。感染してから感染報告までの流れは、以下のようになります。
感染

潜伏期間:1日から12.5日(多くは5日から6日)

発症:発熱してから4日間以上我慢して電話相談

検査

発表
感染してから発表までが大体2〜3週間です。なので、そろそろ緊急事態宣言から3週間になるため、今後の増減数は緊急事態宣言の効果がもろに出ることになります。

では、現在までの新型コロナウイルス感染者数推移を確認してみましょう。

東京の新型コロナウイルス新規感染者数推移

まずは、新型コロナウイルス感染者数が圧倒的に多い東京都から(グラフは、新型コロナウイルス 国内感染の状況より拝借)。

新型コロナウイルス感染者数

オーバーシュートしていません!

これは朗報で、安倍総理は「(現状の)5日で2倍のペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1カ月後に8万人を超える」という発言をしていました。しかし、東京の累計の感染者数はわずか3836人です(わずかという言い方に問題はありますが、予測よりも大幅に少ないという意味で)。1日ごとの新規感染者数も「5日で2倍のペース」では増えていません。これは素晴らしいことです。

ただし、東京は新型コロナウイルスの検査の方でだいぶ絞っているので、これが実態を表しているかどうかは東京都のみでは判断できません。「発表はされていないが、実は隠れコロナがたくさんいる」というような状況は怖いです。

「政府の発表では新型コロナウイルスの感染者数は隠蔽されている!」などと陰謀論みたいなことを叫ぶ人がいます。東京の人がそこら中でゲホゲホしている状況ではありませんし、新型コロナウイルスによる死者数も激増していませんので、そこまでひどい蔓延はしていないです。

ただ、東京だけでは読めないところがありますので、他の県もチェックする必要があります。

神奈川の新型コロナウイルス新規感染者数推移

埼玉県は医療崩壊を恐れて検査を絞ったという発言がされています。ということで、ここは神奈川県の新型コロナウイルス新規感染者数推移を見てみます。
新型コロナウイルス感染者数

オーバーシュートしていません!

それどころか、新規感染者数は横ばいか、あるいは微減です。これは朗報です。

大阪の新型コロナウイルス新規感染者数推移

続いて、新型コロナウイルス対策をしっかり進めて発表している吉村知事のいる大阪府をチェックしてみます。
新型コロナウイルス感染者数

オーバーシュートしていません!

新規感染者数は横ばいか(クラスターの発生はありました)、あるいは微減です。これは朗報です。

日本の新型コロナウイルスの感染ペースはどうなっているのか

東京の感染者数の発表は怪しいとしても、神奈川や大阪の感染者数推移を見る限り、全く欧米のようなオーバーシュート(2〜3日で2倍)は起こしていませんし、安倍首相の発表した5日で2倍というようなペースでも感染者数が増えていません。しかも緊急事態宣言の効果が完全に出る前の週末外出自粛要請を出した程度でです。

これは一体何なのかというと、「日本では欧米のようなオーバーシュートは起きない」ということです。東京の1ヶ月後、2ヶ月後の新型コロナウイルス感染者数予測の中で、このように書きました。
予測が難しいのは、5日で2倍のペースは正しいのか、感染力の推定は正しいのか、BCGに効果はあるのか、日本人はすでに免疫を持っているのか、気温や湿度は関係あるのか、紫外線は関係あるのか、マスクに効果はあるのか、言語的な違いはあるのか、3密を避ければ大丈夫なのか、などさまざまな要因を含んでいるためです。
と書きました。要因はいまだにわかっていませんが、やはり日本では新型コロナウイルスの感染ペースは遅いようです。

西浦教授は、「行動制限なしなら42万人死亡」と発表しました。これは基本再生産数R0=2.5で見積もった数値だと思われます。

行動制限する人(p)の割合を、欧米の例を参考にR0(基本再生産数)と Re (実効再生産数)から導き出します。

R0=2.5
R0=(1-p)R0<1
p>1-1/R0=3/5=0.6

だけど、夜街は難しい。だから8割と導き出されています。


ただ、この欧米を参考にしたR0の設定が2.5というのが、日本では違っている可能性が高そうです。日本ではマスクやBCGや気候や何らかの要因があって、そもそもR0が2.5もなく、感染が広がりにくいと考えられます。また、新型コロナウイルスは年齢が高い人ほどウイルス排出量が多く、重症患者が多くなると感染拡大のペースが早くなるとも考えられます。日本では軽症で済む若者が多いため、感染拡大のペースが遅いか、感染しても無症状で発見されないのかもしれません。

現在はまだ人と人との接触が8割減らせていない状況で、新規感染者数の推移が横ばいか微減傾向です。ということは、今週来週で緊急事態宣言の効果が出てくると、「明らかな新規感染者数の減少傾向」というものが見えてくる可能性があります(まだ可能性なのでわかりませんが)。

もし緊急事態宣言の効果で減少傾向が見えたら、コロナ終息の可能性が見えてくる

もし緊急事態宣言の効果で減少傾向が見えてくるようなら、まさかの新型コロナウイルス終息の可能性が見えてきます。

日本の新型コロナウイルス対策の目的(基本的な考え方)はこのように決められてきました。
新型コロナウイルスのピークをずらす
流行のピークを下げることによって、医療崩壊を防ぎ、集団感染を防ぎ感染の拡大を抑制し、ピークを後ろにずらす作戦でした。

新型コロナウイルスの感染力がわからない中で、医療には限界があり、オーバーシュートしてしまう可能性があることを考慮すると、この作戦も仕方のないものだったのかもしれません。

しかし今になってわかったことは、「欧米では爆発的な感染者数の拡大を見せたが、東アジアではそこまで爆発的には広がっていない」という事実です。ベトナムや台湾では新型コロナウイルスを見事に抑え込んでいますし、タイなども感染者数はそれほど多くありません。気候的な影響もあるかもしれませんし、理由はわかりません。日本も他のアジアの国と同様に、「実は日本でも新型コロナウイルスを終息させることが可能かもしれない」という希望が出てきています。

もし緊急事態宣言の終わる5月6日までに、新型コロナウイルス新規感染者数が減っているようなら、終息させるための作戦に切り替えても良いのかもしれません。今の作戦は「ピークを後ろにずらす」ですが、思い切って「終息させる」に作戦を切り替えるのも手だと思います。

終息させるには、外国から入ってくる人をきちんと隔離することと、「人と人との接触を8割減らす」ことが大切です(R0の仮定が間違っていたとしても、割合は大きければ大きいほど良いです)。緊急事態宣言を5月末かプラス1か月の6月5日まで延長して、現金給付や補償も上積みして、最初に痛みを伴って一気に終息に向けて動くのもありかと思います。緊急事態宣言を解除してずるずるとゆるい自粛を続けると、さまざまな業種が疲弊して経済的に潰れます。ずるずると自粛を続けることなく、一気に終息に向けて動けるといいなぁと個人的には思っています。それも今後10日間の新規感染者数の推移次第です。現時点では、まだ作戦を変えるための決断をできるタイミングではありません。明らかな減少傾向が見えるのか、あるいは微減なのか、横ばいなのか。緊急事態宣言の効果によって、新規感染者数が大幅に減ってくれば明るい未来も見えてくるのではないかと思っています。

もしほとんど減らないようであれば、ワクチンの開発や治療薬の発見や何らかの解決策が見つかるまで、ずーっと自粛を続けることになります。気候が関係あるなら、暖かくなって多少感染者数が減ったとしても、また冬になって大流行する恐れがあります。今後の見通しはまだ誰にも読めません。毎日、新型コロナウイルス新規感染者数が減っていくことを祈るばかりです。

そういえば、タイトルに「新型コロナウイルスで日本人は42万人も亡くなってしまうのか」と書きました。今シーズンにそんなに亡くなることはないです。緊急事態宣言が解除されてもゆるい自粛は続くでしょうし、3密は避け、マスクもするでしょうし、気候の問題などもあるかもしれません。日本では欧米のようなオーバーシュートはまず起きないと考えていいと思います。42万人も亡くなりません。