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今(4月7日時点で)、東京に何人の新型コロナウイルス感染者がいるか

2020年04月08日 雑記
日本で新型コロナウイルスの感染が広がり、先月3月23日に東京の小池都知事が「都市の封鎖、いわゆるロックダウン」の可能性に言及したことを受けて、「首都脱出」や「東京脱出」をする人が出てくるのではないかと危惧されるようになりました。

この脱出劇は、中国やイタリアで見られた現象です。すでに都市で新型コロナウイルスが蔓延してから脱出すると、そのウイルスが地方に拡散されてもっと大変なことになります。

都市で新型コロナウイルスが蔓延してから脱出すると…

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都市で新型コロナウイルスに感染してから地方に帰省すると、仲間にも感染を広げてしまいます。このような状況にしないためには、「都市で蔓延してから地方に移動しない」ことが大切になります。コロナ疎開は危ないです。

日本でも緊急事態宣言が発令されて、メディアは東京脱出する人を捕まえようと必死になっています。空港やバスターミナルに張り込んで、地方に行く人をインタビューして煽ろうという作戦です。

しかし残念ながら、日本では中国やイタリアで見られたような大規模な脱出劇は起きていません。空港はガラガラでバスターミナルもガラガラです。

なぜかと言えば、日本の法律では「都市封鎖」ができないからです。3月に新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)の改正法が成立したとき、新型コロナウイルス感染症への対策として強力な指示力を持つ法律ができたのかと思いました。しかし、法律の中身はとても弱いものでした。都市の封鎖や交通網の封鎖はできませんし、外出禁止を指示して罰金を取ったりすることもできません。あくまでも「自粛」を「要請」しかできない弱い法律です。大きな施設に対しては要請と指示ができますが、そこまでです。都市の封鎖ができないので、慌てて脱出する人もいない、というのはなかなか面白いところだと思います。都市の封鎖をするには、憲法から変える必要があるらしく、その点に関しては安倍総理は乗り気のようです。ただ、人権が制限されるような強力な改憲を許してしまうと、権力を持った人が暴走したときに歯止めが利かなくなってしまいます。この辺りは難しいところです。

今、東京に何人の新型コロナウイルス感染者がいるか

さて、都市で感染症が蔓延してから地方に脱出すると大変なことになります。今、東京には何人の新型コロナウイルス感染者がいるのでしょうか。緊急事態宣言が出された4月7日のデータからそれを推測してみます。

まず、都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイトから、4月7日の検査陽性者の状況を見てみます。
東京の陽性患者の状況

検査により、「新型コロナウイルスに感染している」と判定された人は累計1195人います。
また、緊急事態宣言の会見で安倍晋三首相はこのように述べました。
(現状の)5日で2倍のペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人、1カ月後に8万人を超える。全員が努力を重ね、人と人との接触機会を最低7割、極力8割削減できれば、2週間後には感染者の増加をピークアウトさせ、減少に転じさせることができる。
今が約1200人で、2週間後に1万人、4週間後に8万人を予想しているようです。これは欧米のような2〜3日で2倍というオーバーシュートした爆発的な伸びではなく、「5日で2倍」「2週間で約8倍」という伸び方を予想しています。

ここで大事なのは、「緊急事態宣言が出されてから自粛しても、2週間後の感染者数にはほぼ変化がない」ことです。

今日から自粛しても、2週間後の感染者数はほぼ変化がない

なぜ2週間後の感染者数にはほぼ変化がないかというと、まずは厚生労働省の新型コロナウイルスを防ぐには(PDF)を確認してみます。
新型コロナウイルス感染症とは

新型コロナウイルスの感染から発症までの潜伏期間は、1日から12.5日(多くは5日から6日)と書かれています。感染してもすぐにはCOVID-19を発症しないということです。

また、厚生労働省の新型コロナウイルス感染症についての相談・受診の目安(PDF)を確認してみます。
新型コロナウイルス感染症とは

高齢者や基礎疾患などを持っている人を除き、発熱してから4日以上我慢してからでないと、帰国者・接触者相談センターに相談してもとりあってもらえません。

なので、感染してから感染報告までの流れは…
感染

潜伏期間:1日から12.5日(多くは5日から6日)

発症:発熱してから4日間以上我慢して電話相談

検査

発表
となります。ここまでが大体2〜3週間です。

つまり、今日、新型コロナウイルスに感染したと発表された人は、約2週間前に感染した人たちです(帰国者や濃厚接触者は除く)。今日感染した人は、また約2週間後に発表されることになります。今日自粛を始めても、2週間後にはあまり影響がないことになります。2週間を過ぎた頃から影響が出始めます。

今、東京には1万人の新型コロナウイルス感染者がいる?

安倍首相は「(現状の)5日で2倍のペースで感染拡大が続けば、2週間後には1万人」の新型コロナウイルス感染者が出ると発言しました。ということは、政府の試算では、「今、東京には1万人の潜在的な新型コロナウイルス感染者がいる」と考えていることになります(回復者については考慮していません。何日経ったら回復してウイルスが消え去るか、という確かなデータがありませんので)。まだ発症していない人も含めて、東京には約1万人の潜在新型コロナウイルス感染者がいることになります。

東京の人口は1300万人台と言われていますので、そのうちの1万人、確率としては雑に約0.1%くらいの人がすでに新型コロナウイルスに感染していることになります。1000人に1人くらいしかまだ感染していないことになりますので、まだそこまで「蔓延」という感じでもなさそうに思います。

東京の感染報告は氷山の一角?

実は、ここで考えないといけないことが、二つあります。
一つは、「東京で発表された人数は、全ての新型コロナウイルス感染者の数なのか」ということ。
もう一つは、「5日で2倍のペース」は合っているのか、ということ。

「東京で発表された人数は、全ての新型コロナウイルス感染者の数なのか」というと、実は違います。これについては、クラスター対策班の西浦博教授が「氷山の一角」だとはっきり述べています。新型コロナウイルス感染症は、無症状や軽症状の人も多いです。また、相談センターに連絡しても、なかなかPCR検査してもらえないのが現状です。なので、東京都から発表された感染者の数字は実態を表していなくて、実際には数倍から十数倍いてもおかしくありません。

また、「5日で2倍のペース」は、その予測が合っているのかわかりません。東京都の検査のスピードが間に合っていないため(相談センターへの電話回線はパンクし、PCR検査も拒否されることが多い)、現状どういうペースで伸びているのかわかりません。最近は東京で100人前後の感染者数が発表されています。東京都の検査限界は一日平均300〜400とも言われていて、これでは感染者数の正しい増加ペースがわかりません。5日で2倍のペースで合っているかもしれませんし、欧米のようにオーバーシュートして2〜3日で2倍、一週間で5倍、2週間で30倍のペースになっていることだってありえるかもしれません。今までも日本ではいきなり感染ペースは増加していませんし、欧米と違ってある程度の自粛はしていたため、欧米と同じ急激な伸び方はしないと思いますが。

参考までに、ニューヨークでは感染者数923人の17日から2週間後の31日には41771人まで増えました。
ニューヨーク市の新型コロナウイルス感染者数の推移のグラフ
図表:グラフストック

ということで、今発表されている感染者数が氷山の一角だと、実際には数倍から数十倍いてもおかしくなく、増加のペースが欧米並だと2週間で30倍(ニューヨークは45倍)まで増える可能性だってあります(ないと思いますが)。

ということで、現時点での東京の感染者数は、少なく見積もって1万人、最悪のケースでは100万人超え(無症状含む)ということも考えられるかもしれません。

答えは、2週間後になってからでないとわからないのが、新型コロナウイルスの厄介なところです。今の感染者数だけ見ていると手遅れになります。常に2週間後を想定しながら、対策を取る必要があります。日本では、昨日やっと緊急事態宣言が出されました。感染症の専門家の予想と経済対策のバランスを取って、昨日がそのタイミングだったのだと思います。2週間後に100万人まで感染者が増えることはまずないと思いますが、想定通り1万人くらいのなるべく少ない感染者数でいてもらいたいものです。日本は他国に比べて、「圧倒的に新型コロナウイルスによる死者数が少ない」という特徴がありますので、このあとも少ない死者数のまま推移してもらいたいです。


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