バンザイクリフの写真
2013年04月12日 海外
産経新聞にバンザイクリフについての記事が掲載されていました。
第二次大戦で激戦の舞台となり、民間人を含む約7万の日本人が死亡した米領マリアナ諸島の取材で、心痛む光景に出くわした。大戦末期、追い詰められた多くの日本人が「万歳」と叫んで海に身を投じたサイパン島北部の「バンザイクリフ」で、ピースサインをしながら写真に収まる日本人観光客を見かけた。
バンザイクリフ。昔この名前を聞いたとき、一瞬ハッピーな名前だと想像しました。そしてその次に名前の由来を聞いて悲しくなりました。
クリフ(Cliff)とは、崖や絶壁を指す英単語です。その「クリフ」の前に「バンザイ」と付いています。たまたま日本語と同じバンザイという発音だったのか、あるいはウルフルズのバンザイにあるような幸せな場所だからバンザイクリフとなったのか、最初はそのように想像しました。
でも現実は残酷で、このバンザイクリフで、「天皇陛下、万歳」と叫びながら、日本兵や民間人が飛び降り自殺したことから「バンザイクリフ」と名付けられています。この地での自決者数は1万人とも伝えられています。戦争によって、一般民間人の女性や子供も亡くなった悲しい場所、それがバンザイクリフというわけです。
以前、バンザイクリフに行って写真を撮ってきました。ここがバンザイクリフの入り口で「WELCOME TO BANZAI CLIFF」と書かれています。
空も海も青くて、本当に美しい場所で、「過去に戦争があった」なんてなかなかイメージできない場所です。
水平線。この水平線の向こう側に、日本があります。日本、天皇陛下に一番近い場所で死のうと、1944年、このサイパン島最北端の岬で、次々と身が投じられました。
この青い海が真っ赤に染まったと言われています。
なぜ軍人以外に一般人まで身を投じなければいけなかったのでしょうか。それは、アメリカ軍の捕虜になるのは恥、捕虜になるとアメリカ人に何をされるかわからない、という考えが共通していたからのようです。空も海も青く美しいこの地で、米軍に追い詰められ、バンザイと叫びながら飛び降りたそうです。
さて産経新聞の記事では、「バンザイクリフでピースサインをしながら写真に収まる日本人観光客はけしからん」と書いてあります。サイパン島での過去の歴史を知っていれば、たしかに「ピースサインは不謹慎」と考えてもおかしくないのかもしれません。
でも今は…今はこのきれいな場所、写真よりももっと美しい場所バンザイクリフでピースサインをすること、それが悪いことなのかどうかは自分にはわかりません。空気がきれいで、景色がきれいで、悲しみを忘れさせてくれるほど美しい場所。そこでピースサイン(平和を祈るサイン)をできるのは、今が平和だからであり、それは幸せなことなのではないかとも思いました。
で、バンザイクリフでピースサインをする女性はいるのかというと…あっ、いた!
自分がバンザイクリフに行ったときも、笑顔でピースサインをしながら写真を撮ってもらっている若い女性はいました。この景色や空気と今の平和な世の中によって、自然とピースサイン(平和を祈るサイン)が出ているだけなので、それほど「けしからん」と言わなくてもいいのではとも思いました。これがピースサインではなくて、バンザイのポーズだったりしたら、どうかとも思いますが。何も考えずお気楽にピースサインができる、平和な世の中だということでいいのではないでしょうか。
なお、記事にあるように崖周辺には多数の供養塔があります。
供養塔を背にしてピースサインで写真を撮っている人はいませんでしたし、崖の下を背景にしてピースサインで写真を撮っている人もいませんでした。
「空と海がきれいだから写真を撮った」、その程度の平和な写真撮影なのだから、産経新聞のように「日本人のモラルは…」なんてイチイチ言わなくても良いのではと思います。
2015年6月追記:産経新聞が「バンザイクリフ」での行為を取り上げすぎな件