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50年前のニコンのレンズを買ってみた

2009年11月06日 カメラ・写真
2009年は、ニコンFマウント誕生50周年。今から50年前、1959年に発売されたFマウントレンズ「Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5」。
当時はまだ会社名がニコンではなく、日本光學工業株式會社時代。レンズに書かれている名前も、「Nippon Kogaku Japan」です。
驚くべきは、レンズ焦点距離の単位。現在は「mm」で統一されていますが、この頃は「cm」表記です。現代のレンズデザインとは違い、クロームメッキされていてシルバーがきれいです。


このレンズ、当時の販売価格は3万円だったようです。1959年というと、うちの父でさえまだ中学生の頃。昔過ぎて、物価を含めて、自分にはいまいちイメージがわきません。50年前のニコンのレンズが一体どういう写りをするのかどうしても気になり、「Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5」を中古で購入してみました。

今回入手したレンズ自体は1959年の発売から、数年経ったあとに製造された物だと思います(製造番号から)。ほぼ半世紀も前に作られたレンズです。こうしてきれいな状態で残っているのは、持ち主の保存状態が良かったのと、ニコンの製造品質が高かったからだと思います。


「Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5」は、ゾナータイプの光学系を持っています。「ニッコール105mm」は歴史が長く、1971年にクセノタータイプに設計変更され、銘玉としてその後30年以上も販売され続けました(第五夜 AI Nikkor 105mm F2.5 - ニッコール千夜一夜物語)。途中で設計変更されたということは、描写に何か問題でもあったような気がしてしまいますがどうでしょうか。

とりあえず、長い長いニコンFマウントの歴史において、この「Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5」のような古い非AIレンズでも問題なく装着できるD60に装着してみました。


中望遠のレンズにしてはコンパクトで、見た目のバランスはばっちりです(レンズ自体はそこそこの重みがあります)。

さて、50年前のニコンのレンズはどんな写りをするのでしょうか。試しに撮ってみた写真はこれです(以下、クリックで拡大します)。



古いレンズのため、コントラスト・色味がどうなるのか心配していました。試しに写してみると、おどろいたことに全く問題ありません。開放F2.5での描写はさすがに甘いのは当然としても、絞ってF2.8で少しシャープさが出てきて、F4まで絞れば十分な写りになります。下2枚の写真は、左がF2.8、右がF4.0です。
 

このレンズの良いところは柔らかさです。ピント面にそれほどシャープさはありませんが、ボケ味が素直でとても柔らかい写真が撮れます。上の2枚の写真のように、ボケ味の悪いレンズだと二線ボケが出そうなシーンにおいても、柔らかくボケて雰囲気の良い仕上がりになります。

このことから、「Nikkor-P Auto 10.5cm F2.5」は、ポートレートに向いているレンズだと思います。撮影する前は、絞り開放ではパープルフリンジがもっと出るかと思っていました。それも、思っていたよりもたいしたことはなく、少し絞ったときにグリーンフリンジが多少残る程度で問題ありませんでした。

今度は、近距離から金属を写すとどうなるか試写してみました。


柔らかくて空気感を感じる写りです。金属を撮るのも悪くないです。
撮った写真はデジタルデータのため、コントラストが低ければコントラストを上げるつもりでしたが、全然必要ありませんでした。むしろ上の写真は、デフォルトよりもコントラストを下げた設定で撮っています。

コントラスト、シャープネスを上げるとこんな感じになります。


また、柔らかさだけの評価だと全くシャープさがなさそうに聞こえてしまいます。近距離から絞りF4で撮影してみました。


写真を拡大してみるとわかりますが、ピント面は見事シャープに写り、毛の一本一本まで判別できます。ハイライト部分を繊細に描写できることからも、このレンズの性能の高さがわかります。ボケ味もとても良いです。

それから、絞って遠景を写すとどうなるのか。F8まで絞って撮影してみました。


絞って撮影しても繊細な描写はそのままに、見事に全域解像しています。解像力、コントラスト、色味すべてにおいて何の問題もありません。
このレンズが発売されたのは1959年。この当時、カラー写真を撮っている人はどれくらいいたのでしょうか。ほとんどの人はモノクロで撮影していたと思われます。半世紀経って、デジタルカメラで撮影しても見事な描写を見せてくれました。

ということで、50年前のニコンのレンズを買ってみたわけですが、想像していた以上に「50年前のニコンのレンズはよく写る」ということがわかりました。

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