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バッター出身監督とピッチャー出身監督の違い

2008年03月31日 スポーツ

プロ野球を見ていて楽しいことのひとつに、「監督によって育成方針や戦術が違う」ことがあります。野球は一人でプレイすることはできないので、組織を動かすための育成方針や戦術によって、チームの強さ、勝率などが変わってきます。

素人の考えでは、
「バッター出身監督なら最強の打線に!」
「ピッチャー出身監督なら最高の投手王国に!」
なるのではないかと思ってしまうところなのですが、よくよく分析してみると、その逆であることが多いように感じます。

バッター出身監督の場合

例えば、去年53年ぶりに日本一に輝いた中日ドラゴンズの落合博満監督は、三冠王を3度も獲得したほどのバッター。
その落合監督が、打撃を中心にチームを補強したかというと、実際は補強せずに練習で個人の能力を上げるという方針でチームを強くしました。練習のおかげか、荒木−井端の二遊間などの守備が鉄壁で、守りで勝つチームとなっています。

チャンスで打てなかったとしても、「俺だって打てないときがあったんだから仕方ないでしょ」と語り、選手を責めることはほとんど無く、天才バッターならではの感覚がそこにはあります。自由契約になった中村紀洋を育成選手として獲得して、日本シリーズMVPに輝かせたり、西武から移籍していまだノーヒットの和田にたいして「和田はもっと苦しめばいい」と発言するなど、バッターの悩みは感覚的に理解しているように感じます。
落合監督は、「俺でも打てないときがある」のを知っているからこそ、「守備を強くしている」のかもしれません。

ピッチャー出身監督の場合

2004年から2005年に巨人の監督をした堀内恒夫監督は、現役時代「13年連続2桁勝利」を上げたほどのピッチャー。
その堀内監督が、ピッチャーを中心にチームを補強したかというと、実際はホームランバッターばかりを揃え、ピッチャー陣は大崩壊し、2年連続して球団の防御率ワースト記録を更新するという最悪の結果となりました。
フロントの方針等もあって仕方なかったとはいえ、「中4日半での完投制」など、堀内監督が現役時代に実行できた古い投手理論を持ち込んだことも原因の一つです。本人は天才ピッチャーだから、それくらい当たり前で、あとは「バッターが打ってくれれば勝てる」という気持ちもあったのかもしれません。

キャッチャー出身監督の場合

ピッチャーの気持ちもバッターの気持ちもわかると言えばキャッチャーです。他のポジションに比べ、「バランス」面ではもっとも優れていると言えそうです。ただし、「バランス」だけでチームが強くなるかどうかはわかりませんが。森監督や野村監督はキャッチャー出身監督として、大成功していますね。

優勝回数4回以上の監督とその出身ポジション

セカンドやショート出身の名監督について - Yahoo!知恵袋に載っていたデータによると、優勝回数4回以上の監督とその出身ポジションは、
1 川上 哲治 11回 一塁手
1 鶴岡 一人 11回 三塁手
3 藤本 定義 9回 投手
3 水原 茂 9回 三塁手
5 森 祇晶 8回 捕手
5 西本 幸雄 8回 一塁手
7 三原 脩 6回 二塁手
8 上田 利治 5回 捕手
8 野村 克也 5回 捕手
8 長嶋 茂雄 5回 三塁手
11 古葉 竹識 4回 遊撃手
11 広岡 達朗 4回 遊撃手
11 藤田 元司 4回 投手
11 王 貞治 4回 一塁手
となっていて、投手2人、捕手3人、一塁手3人、二塁手1人、遊撃手2人、三塁手3人で外野手出身監督は一人もいませんでした。打撃能力が必要とされず絶対数の多い投手を除くと、打撃能力が必要とされ守備の連携も重要な捕手や内野手に名監督が揃っています。他の選手との守備連携度が低い外野手出身の名監督が一人もいないところが興味深いところです。

まとめ

何かの天才レベルにまで到達してしまうと、その全てを感覚で理解できるようになってしまい、組織として成立させるために「短所を補う」方向に動くことが多いように感じます。
短所を補う」際、ある程度精通している分野であればその補強もうまくいきますが、全く精通していないと見当外れな補強ばかりしてしまい、うまくいかないことが多いようです。

個人レベルの場合は、「長所を伸ばす」ことを考えているはずなのに、組織レベルになると「短所を補う」方向に動くというのは、面白い行動ですね。