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SPPを一切使わずに、DP2 MerrillのX3F現像をしてみる-風景編-

2012年11月10日 カメラ・写真
SIGMA DP2 Merrillを使って撮影すると、4600万画素のX3Fファイルができあがります(もちろん、普通にJPEGで記録することも可能です)。ニコンの一眼レフで一番画素数が多いカメラは、ボディだけで20万円を超える価格ながら、今年爆発的に大ヒットしたニコン D800です。D800の画素数は、3600万画素。そのD800より約1000万画素もデータ量の多いカメラが、「超弩級コンデジ」であるシグマDP2 Merrillです。

大容量のRAWデータを活かすには、専用のRAW現像ソフトが必要になります。RAW現像ソフト次第で、写真の仕上がりも大きく変わってきます。ところが、DP2 MerrillのX3Fファイルを現像できるRAW現像ソフトは、シグマ純正の「SIGMA Photo Pro」(以下SPP)しかありません。残念ながら、LightroomSILKYPIX等の一般的なRAW現像ソフトは対応していません。

SPP自体はバージョンアップを重ねて改良され続け、これはこれで良い現像ソフトに仕上がっています。でも、もう少し他の現像ソフトの結果も見てみたかったりします。特に、DP2 MerrillのX3FをSPPで現像した場合、「コントラストが高い、明瞭度が高い、シャープネスが強い」という印象を受けますので。これはFoveonセンサー特有の現象なのか、RAW現像ソフトの傾向の問題なのか、見極めてみたい気持ちもあります。

ということで今回は、X3Fファイルから生のデータを取りだして、自分で現像してみることにしてみました。これでSPPの傾向性や特徴がわかるはずです。



風景写真の場合

今回の記事では、風景写真の現像で試してみます。試す写真は、「【速報】DP2 Merrillが中判カメラをも超える超弩級コンデジだった件」でインパクトを与えた、下の写真です。シャープネスが強い印象があるので、SPPでシャープネスを一番弱い状態「-2.0」に設定して、TIFFファイルに変換した後、Lightroomで白黒写真にしてみました。画像クリックで、等倍画像が表示されます(データが重いのでご注意ください)。シャープネスを最低にしても、かなり解像感の高い仕上がりです。
SPP現像(シャープネス:-2.0)

次に、上の写真の元のX3Fデータからツールを使いTIFFファイルに変換し、その後Lightroomを使って上の写真に近くなるように、コントラストや明るさを調整して仕上げてみました。シャープネスの設定や明瞭度は一切いじっていません。ノイズリダクションもかけていません(上のSPP現像の方は、0.25の色・輝度ノイズリダクションをかけてあります)。
SPPを使わずに現像

SPPを使った場合と使わなかった場合の写真を、等倍で見比べてみてください。

SPPの現像は、シャープネスと明瞭度が高くてクッキリした仕上がりです。一方、SPPを使わずに現像した方は、そこまでクッキリとせずナチュラルな仕上がりです。このことから、SPPはシャープネスを最低の-2.0に設定しても、ある程度のシャープネス処理等がかかっていることが予想されます。

また、このクッキリ感の違いから、ピントが合わずにボケている部分のがさつき具合やノイズ感にも差があることがわかります。写真右下の草の部分を見てください。前ボケになっている草の部分は、SPPで現像するとクッキリしている分だけ、ボケの汚さやノイズ感を感じます。エッジが強調されすぎて、二線ボケのようにも感じます。一方、SPPを使わずに現像した方は、割となめらかに仕上がっています。レンズの描写が硬いのではなく、現像の仕方でDP2 Merrillの写真のボケ味が硬く写って見えるようです。

それから、写真の写っている範囲にも注目です。SPPを使った場合と使わなかった場合で、写っている範囲が違います。SPPを使わずに現像した写真の方が、上下左右とも広く写っています。例えば写真上部の木の枝の辺りを見比べてもらえばわかりますが、SPPを使わずに現像した写真の方が広く写っているのを確認できます。これは元々のX3Fファイルには、SPPで出力する画像よりも広い面積でデータが記録されているからです。


以上のことから、SPPの特徴として、シャープネス(もしかしたら明瞭度を含むのかもしれない)を高めてクッキリとした画像を出力していることがわかりました。出力する画像サイズと記録画像サイズが違っていたことは、新しい発見でした。

風景写真の場合は、このようにクッキリと写すことは解像感を高めて、気持ちの良い画像に近づく場合が多くなります。一方で、このクッキリ感が悪影響を及ぼすタイプの写真もあります。肌のきれいさを表現したいポートレート写真等です。特に女性の場合は、SIGMA DP2 Merrillで写すのは厳しいものがあります。コントラストや明瞭度が高く、肌が汚く見えてしまうからです。これは今までFoveonセンサーの傾向なのかと考えていましたが、上記テストの結果、SPPの仕上げの方向性によるものだという可能性が出てきました。

というわけで、次回はポートレート写真で、今回と同じように比較してみることにします。

続きSPPを一切使わずに、DP2 MerrillのX3F現像をしてみる-ポートレート編-