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海水浴場における放射能濃度測定方法について

2011年06月23日 雑記

泳いでも健康に影響はない(きっぱり)

今年の海水浴について、枝野官房長官から「海水浴場に影響ない」と発表されました。
135か所のうち、福島県いわき市の勿来海水浴場を除いて、いずれの海水浴場でも検出限界を下回る結果となり、泳いでも健康に影響はない

官房長官 海水浴場に影響ない NHKニュース
健康の前に「ただちに」は付いていないので、健康への影響は全くないようで、安心です。

海水浴場における放射線量の指針(海水がぶ飲み派も安心)

海水浴場の放射線量について、どういう値ならば健康に影響がないのか、指針も発表されています。
原発事故を受けて海水浴場などでの放射性物質への懸念が高まるなか、環境省は、海や川で泳いでも問題がない放射性物質の濃度を、水1リットル当たり50ベクレルなどとする指針をまとめました。



新たな指針によりますと、泳いでも問題がない海水などの放射性セシウムは、1リットル当たり50ベクレルで、7月と8月の2か月間、小学生が毎日5時間泳いで水を1リットル飲んだとしても、放射線の積算量は、1年間に浴びても差し支えないとされる限度の1ミリシーベルトの10%以下にとどまるということです。

海水浴場など 放射線量で指針 NHKニュース
2ヶ月間、小学生が毎日5時間泳ぎ続け、そして常に海水を1リットルも飲むという、かなり安全側の基準に立って指針がまとめられたようです。水道水より海水の方が基準が厳しいという少し不思議な指針になりました。海水がぶ飲み派の人も安心です。

海水の基準値は以下のように決められたようです。
基準は1リットルあたり、放射性セシウムが50ベクレル、放射性ヨウ素を30ベクレルで、飲料水(セシウムは200ベクレル、ヨウ素は300ベクレル)より厳しく設定。海水浴が日常生活に不可欠ではないことから、被曝(ひばく)量を可能な限り低く抑えることが望ましいと判断した。

海水浴場の放射線暫定基準、飲料水より厳しく : 環境 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
「海水浴が日常生活に不可欠ではないことから、被曝(ひばく)量を可能な限り低く抑えることが望ましいと判断した」。日常生活に不可欠な水道水こそ、被曝量を可能な限り低く抑えることが望ましいような気もしますが…。

海水浴場の水質調査方法について

どうやって海水の放射線を検査しているのか、茨城県の海水浴場の水質調査方法が載っていました。
調査内容

(1)海水:放射性核種分析
(水深約1から1.5メートルの場所の表層及び下層で採水)
(2)砂浜:砂浜表面、高さ50センチメートル及び1メートルにおける放射線量率測定
(1海水浴場あたり5地点で測定し、平均値を採用)

茨城県>県内海水浴場の水質調査等(開設前1回目)の結果

放射線の検出下限値は以下の通りです。
※検出下限値(ヨウ素131:4Bq/リットル、セシウム134:6Bq/リットル、セシウム137:9Bq/リットル)を下回る場合は、不検出と記載。
ヨウ素131は半減期が短く、すでにほとんどなくなっているはずです。セシウムの方は、セシウム134とセシウム137を別々に検出し、下限値未満なら不検出となるようです。

茨城県の検出結果は、「茨城県内の17海水浴場の結果について:観光いばらき」に海水浴場マップ付きで載っています。全ての海水浴場で放射線は検出されなかったようです。安心ですね。

セシウムは底にたまるのでは?

海水浴については、かなり安全基準に立って指針がまとめられました。ただ、実際の海水浴シーズンの海水と、今回の検査方法では少しズレがある可能性があります。どういうことかというと、セシウムは重く、水に入ると下の方に沈んでいき、そして土に吸着する傾向があることです。

例えば、すでに水道水からは放射性セシウムはほとんど検出されなくなっています。それにも関わらず、今でもダムの底では高い値の放射線量が検出されています。
県は21日、生活用水に使われているダムや湖、農業用ため池などについて、初の放射線量調査結果を公表した。水から放射性物質はほとんど検出されなかったが、堀川ダム(西郷村)の底の土壌から放射性セシウムが1キロ当たり6540ベクレル検出されるなど、ダム底で比較的高い値が出た。

東日本大震災:ダム底で比較的高い線量を検出 県が生活用水調査 /福島 - 毎日jp(毎日新聞)
福島県のダムの話ではありますが、「1キロ当たり6540ベクレル」というとかなりの濃度です。

今回の海水浴場の検査は、「水深約1から1.5メートルの場所の表層及び下層で採水」して検査しています。水深約1から1.5メートルの場所まで行って、すぐ採水して帰ってきて検査しているわけです。

でも実際の海水浴場での楽しみ方を考えると、この採水方法では少し現実に即していないかもしれません。海水浴シーズンの海水浴場で遊ぶ人というのは、砂浜から海に入り、水深の低いところで走り回ったりします。そういう場合にどうなるか。海の底の土壌が巻き上げられ、土と海水が混ざります。海水浴場の水は土で濁っていたりしますよね。その土には今年、放射性物質が含まれている可能性があります。小さな子どもは、水深の低い濁った海水近辺で遊んでいて、誤って海水を飲んでしまうこともあります。

「小学生が2ヶ月間、海水を毎日1リットル飲んでも安心」というありえないほどの安全基準を作ったのであれば、土壌に含まれる放射性物質の影響も無視してはいけないのではないかと思いました。より安全側に立った検査方法としては、実際の海水浴場での遊ばれ方を想定して、海で走り回って土を巻き上げてから採水し、それから放射線の検査をすることも必要なのではと思いました。少しでも不安を和らげるための検査をすることが、風評被害を防ぐ対策となります。


追記緑茶と海水と水道水、基準が一番厳しいのはどれだ