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なぜ角川歴彦はぼくに話しを聞きにこないのか?

2010年03月04日 雑記
クラウド時代と<クール革命>を読んだ。
これを読んで思ったのは、「なぜ角川歴彦はぼくに話しを聞きにこないのか?」ということだ。

なぜ角川歴彦はぼくに話しを聞きにこないのか?それがぼくには分からない。本当に、普通に話しを聞きにきても良さそうなものだと思う。むしろ、話を聞きにくるのが自然だと思う。それが、こうまで話しを聞きにこないと、ぼくは角川歴彦のことを疑ってしまう。

ぼくは角川歴彦を、
「本当に真面目にビジネスをする気があるのか?」と疑ってしまう。
「企業として、顧客のニーズに応えようという気があるのか?」と疑ってしまう。
「組織として、クール革命に貢献しようという気があるのか?」と疑ってしまう。

もし角川歴彦がクール革命に貢献しようとするのなら、まず真っ先にぼくのところに話しを聞きに来るべきだと思う。
「べき」と言うか、それがとても自然で、当たり前のことだと思う。

もし本当にそう思うのなら、まずはぼくの話しを聞きにきた方がいいと思うのだが、どうだろうか? ぼくの話しは、そのまま受け取る必要はないにしろ、良くも悪くも参考になるとは思わないのか? 角川歴彦が思う「クール革命」を実践していくために、ぼくの体験を教師としてなのか反面教師としてなのかは別にしろ、参考にしようとは思わないのか?

分からない。ぼくには全く分からない。もしぼくが角川の役員なら、いや、役員じゃなくても社員なら、まずはぼくに話しを聞きにいこうと思うけど、そうは思わないのかなあ。取るもの取りあえず、押っ取り刀で駆けつけると思うのだがなあ。そう思うのはぼくだけなのだろうか? ぼくの考えが間違ってるのだろうか?


ここでクラウド時代と<クール革命>の中に書かれていた角川歴彦の考えのいくつかを紹介する。
・YouTubeはアメリカ艦隊の黒船が突如浦賀に現れたのと似てる。
・Web2.0のイノベーションのツナミは太平洋を渡ってIT業界のみならず日本の産業界を揺さぶった。
・「ユーチューブの投稿動画はコミケ」。「YouTubeのオフィスが小さすぎて思わず笑った」。「コミケを認めてユーチューブを否定したら、それは“老い”」
・「ゲイツビル」から巣立った二人は「IT三国志」の主役になった。
・インターネットによる社会の革新を信じる人は「ネットの民主主義」と呼ぶ。
どうやらこの角川歴彦という人は、Web界で起こっている出来事を、日本の何かに例えるのが好きな人らしい。

一冊読み終えて、簡単に内容をまとめるとするなら、
アメリカのITすげー。日本も国家プロジェクトとして、東京ドーム数個分の土地を確保してクラウドを作れ。名前は東雲プロジェクトにする。
ということでもある。
官営八幡製鉄所を作ったのと同じように、日の丸クラウド「東雲」を政府が作れ、と推奨している。
たとえ話や発想が古すぎて、途中ギャグかと思ってしまう場面が何度もあった。


とにかく、史実を後付けで追っているだけで読んでいてフラストレーションがたまってくる。
結果論を書いてるだけで、先天的に先を見通していたワケじゃない。
後付けだからイライラする。

確かに日本の中では、少し早い方なのかもしれないけれど、それは頭の固すぎる日本人に囲まれているから。
この程度で「一番ITに理解のある日本企業」と呼ばれてしまうのなら、そちらの方が怖い現実だ。

ようはアメリカの真似してるだけ。
アメリカよりも先回りができてない。
戦おうともしていない。

「これからはクラウドだ!」なんて、笑えてくる。
遅すぎ。
これから国家プロジェクトで予算を組んでいろいろ議論してるうちに、世界ではとっくに標準ができあがってしまう。
事業仕分けで予算を削られ、「2位じゃダメなんですか?」と言われるのがオチだ。

「日本国内にサーバーが置けないから、検索エンジンの世界でGoogleに負けた!」これもおかしい。
仮に日本が検索サーバを合法的に置けたとして、Googleに勝てた可能性は0%。
100%Googleに勝てっこない。
どこにGoogleに勝てる日本の企業があったのか。

アメリカの後追いがやっとの日本企業において、Googleのスピードに勝てた企業は存在しない。
そのGoogleでさえ、ちょっとでものんびりしていればインドの若者に負けるからと、セキュリティを犠牲にしてまで新規サービス作りに焦っているというのに。

日本のやったことと言えば、やっと勢いの出てきたWeb系企業のLivedoorをぶっ潰しただけ。
ただ、それだけ。
そのLivedoorだって、まだまだアメリカのパクリから抜け出せていなかった。
これからという時に、日本の頭の固い世代がWebの芽を摘んだ。

当時ライブドアはまだまだ2番煎じのものが多かったが、それでもスピード感には溢れていた。
これからもしかすると、という期待はあった。

そのトップで指揮を執っていたホリエモン。
そのホリエモンでさえ気づけなかったサービスがある。
それは何か。

それは、「クラウド」。

この本のタイトルでもある「クラウド時代」。
あのホリエモンでさえ、クラウドのすごさには気づけなかった。
クラウド時代が来ることを読めなかった。
あとから「どうしてあの時クラウドに気づけなかったのか」とホリエモンに言わせてしまうほどに。
技術的には実現できるものとして存在していても、そのサービスのすごさに気づくのは難しい。
全く別次元の問題だ。
結果論だけでは見えてこない。
ITの最先端で戦っていてさえ見えてこないことがある。

角川歴彦はITの最先端で戦っているのか。
YouTubeに動画をアップしたのか?
Twitterでつぶやいているのか?
iPhoneを使いこなしているのか?
クラウドサービスを使っているのか?


結局、後付けの結果論だけなら好き放題言える。
アメリカで流行ったものが、いずれ日本で流行るなんてえらそうに言ってもたいしたことではない。
ネットの世界では結果論だけを語っていてもダメ。
先を見据え、本当に価値あるものを創造しなくてはいけない。

本当に「クール革命」などと叫ぶのなら、クールだと感じたものにすぐ投資すべき。
それが戦う姿だ。
失敗するかもしれない、それでも「革命」だと思えるものに投資していくことが大事だ。

アメリカの検索エンジンYahoo!に目を付け、投資したのは誰だ。
日本でポータルサイトを流行らせたのは誰だ。
日本のブロードバンドを促進し、世界で最も速く安価なインターネット網を築いたのは誰だ。
いち早くiPhoneを日本に導入し、日本中に革命を起こしているのは誰だ。
ツイッターを全社員2万人に使わせているのは誰だ。
ソフトバンクの孫社長だ。

投資する姿勢がなければ、スピードの速いネット界では勝ち上がることができない。
勝負もしていないのに、結果論だけで語っていては何も見えてこない。


ただ、角川歴彦はひとつだけ良いことを言った。
ガラパゴスのままで良い日本文化
その通りだ。
ガラパゴスはガラパゴスでしか生み出せないものを作り、世界に向けて発信していくべきである。
アメリカの真似をしているだけではいけない。
それこそが「クール革命」。

「クール革命」の時代において、角川歴彦がすべきことは、新たな革命を起こすための投資をすることだ。
日本らしさ、クールジャパンを世界に向けて発信し戦っていくこと。
それを推進するのが角川歴彦の使命だ。
投資をして戦っていかなくては、これからもアメリカの力には勝てない。
「一番いけないのは、コンテンツに対価が支払われなくなって作る意欲がそがれること。『好きだから』と作る人だけでは文化は発展しない。クリエイターに対価が支払われる動画サイト『Revver.com』には、YouTubeから作家が移動したと聞いている。最初は世間に知られたことだけで満足するだろうが、次は経済活動になったことで満足する」

「YouTubeは世界共通語」――角川会長の考える“次の著作権”


ところで、ここで唐突にぼくの知り合いのお母さんの話しをする。
つい最近、ぼくの知り合いはある困っている人にアドバイスをしようとしたことがあったらしい。しかし結局、それはしなかった。なぜなら、それをする前に、母に窘められてしまったからである。そこで母は、ぼくに「その人はお前のアドバイスを求めたか?」と聞いてきた。そこでぼくは、「いや、求めていないよ。しかしこのままでは、その人は早晩破滅するのは目に見ている。だからぼくは、例え求められていなくても、アドバイスをした方がいいと思うんだ」と言った。すると母は「やめなさい」と言った。「それはお節介というものだ。人間というのは、自分からアドバイスを求めた人の話しなら多少聞くことがあるかも知れないが、しかしアドバイスを求めてもいない人の話しは絶対に聞かない。だから、あなたがそこで何をアドバイスしようと、それはただのお節介でしかない。人助けでも何でもない」それでぼくは、なるほどそれもそうだなと思った。そうして結局、そのとても困っている人にアドバイスすることをやめたのだった。だから今回も、ぼくは角川歴彦にアドバイスをすることをしない。もし角川歴彦がぼくに話しを聞きにきたら、その時は何かを言うかも知れないが、しかし自分から言うことだけは、絶対にしないようにする。なぜならそれは、お節介でしかないからだ。それが、ぼくの知り合いがつい最近、母から教わった母の教えだ。


クラウド時代と<クール革命>