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SIGMA DP2 Merrillレビュー-ファーストインプレッション-

2012年07月18日 カメラ・写真


SIGMA DP2 Merrillを購入して一週間。まだ使いこなせてはいませんが、ファーストインプレッションでもまとめておこうと思います。

ボディに関して

■予想していたよりも、ボディは大きかった
前機種DP2xのコンパクトなボディに比べて、DP2 Merrillは大きくて、初めて持った時に少し驚いた。でもすぐ慣れる。このセンサーサイズを考えると、レンズは非常にコンパクトだし、ボディの質感等も良い。

■起動が速くなった
電源ボタンをオンにしてもレンズが飛び出さなくなったため、起動が速くなった。レンズ飛び出しの異音もしないので良い。

■液晶が3インチに進化
DPシリーズ最大の欠点だった、液晶のヒドさが改善。3インチの大型液晶で、今までとは比べものにならない。ドット数も多く見やすい。ただし、室内のライブビューではノイズまでストレートに液晶画面に写してしまうので、暗いところではあまりきれいには見えない(店内販売では若干不利)。

■フィルターをそのまま付けられるようになった
今までのDPシリーズのように、専用フードを付けなくても、フィルターをそのまま付けられるようになった。49mm径の一般的なフィルターがそのまま装着できる。

■ボディ背面の握り心地に匠の心遣い
ボディ前面はストレートだが、背面には気付かないくらいの微妙なふくらみが用意されていて、この匠の心遣いがグリップ力を高めている。すごい。

■ボディ前面にグリップがないのは評価が分かれる
ボディ前面が直線なデザインのカメラは、個人的に好き。でも、このカメラの大きさでこれだけレンズが左端に寄っていると、少しふくらみのあるグリップがあっても良かったかなとは感じる。グリップを膨らませて、そこに厚みのあるバッテリーを入れられるようにしても良かったかもしれない(今のバッテリーだと97枚しか撮影できないので)。

■ストラップを通す金属の出っ張り具合はイヤ
ボディ左のこの飛び出し具合は好きじゃない。ケガをしないように丸める処理はしてあるのだけれど、見た目がここに引っかけてしまいそうで。「DP2」の刻印の左辺りに載せられなかったのかなぁ…と。

操作性に関して

■コマンドダイヤル最高
今までモードセレクト用だったボディ上部のダイヤルが各種設定用のダイヤルに。絞りなどを一眼レフと同じように設定できるようになった。使いやすい。ダイヤルのクリック感は固め。

■シャッター半押しが少し重い
シャッター半押しが少し重めで、そこから全押しまでの距離が短い。うまく半押しできなくて力を入れたら全押ししてしまった、ということが何回かあった。慣れの問題なのかどうかは使ってみないとわからない。

■シャッターレスポンスが良い
シャッタータイムラグが短くなったのか、シャッターレスポンスが良くて快適に撮影できる。だからDP2xよりもずっとブレにくい。

■AFは少し遅め
DP2xよりさらに速くなるかと期待していたが、DP2xより少し遅いくらい。迷う時は迷う。DP1xよりは上で、DP2xより下くらいのAFに感じる。暗いところでの合焦度はDP2xより上がっているように感じる。

■MFの拡大ライブビュー
MFの拡大ライブビューの操作性が良い。液晶画面が見やすいし、拡大と拡大解除の操作性も良い。SONYのカメラに搭載されているピーキング機能でも付いていれば、もっといい。

■QSの操作性がパワーアップ
QSにコマンドダイヤルでの選択が加わったため、まさにクイックで設定できるようになった(今までは行き過ぎてしまった場合など、同じ方向のボタンを何度も連打する必要があった)。


■設定メニューはシンプル
MENUボタンを押すと出てくる設定メニューはシンプル。フォントが縦長で若干ダサい気もするが、設定はやりやすい。設定項目が少ないので、あまり悩まないで済む。

■撮影した画像のプレビュー表示は、拡大縮小操作がやりやすい
コマンドダイヤルを回しての拡大縮小操作がやりやすいし、動作もキビキビとしている。白飛び表示もオプションで設定すれば、決定ボタンでON/OFFできるようになって快適。

■カメラ全体としての操作性はトップクラス
自分としては、基本的にシャッター優先モードで撮ることがほとんどなので、絞り操作と露出操作を快適にできることが自分の求める一番のポイント。DP2 Merrillはコマンドダイヤルと十字コントローラーを使ってそれぞれを操作できるので、操作性は抜群。ライブビューでヒストグラムを表示しながら撮影すれば、露出操作も簡単。ISO感度はQSメニューから選ぶことになるが、ディスプレイ画面左上に現在のISO感度が表示されるので、高感度ISOのまま間違えて撮り続けてしまう危険性は低い…はず。

バッテリー、メモリ等に関して

■バッテリーの持ちはカタログ通り
「約97枚」と書いてあったので、実際に使ってみて60枚くらいしか持たなかったらヤバい…と心配していたが、実使用でも約97枚だった(RAW撮影)。RAW+JPEG撮影だと処理時間が増えて、バッテリーの持ちは少し悪くなるかもしれない。もちろん、画像を再生してずっと見ていたり、いろいろいじっていると実可能枚数は減るはず。バッテリーが最初から2個付属していたのは良かった。

■バッファ7枚がすごい!
RAWで撮影していると、画像1枚あたりのファイルサイズは約50MB。4600万画素のデータというと、爆発的に売れている3600万画素のニコンD800よりも多い。それでいてバッファが7枚分もあるので、連写しなければ快適に撮影できる。前機種のDP2xはバッファが3枚だけだったので、素晴らしい進化。実際使ってみると、7枚連続で撮影するような状況はほとんどないので、処理に時間はかかるがストレスは少なめ。

■撮影処理と書き込みが終わるまで、自分でプレビュー表示できない
バッファが多くて嬉しいが、一点だけ不満が。シャッターを切り、自動でプレビュー表示された後、再生ボタンを押しても、撮影処理と書き込みが終わるまではプレビュー表示できない。処理がきついのはわかるが、自分でプレビュー表示できないのは不満。本当は自動プレビューをなしにして撮影レスポンスを上げたいところだけど、自動プレビューさせないと、書き込みが終わるまで全く画像確認ができないので、仕方なく5秒のプレビュー表示をさせている。

■メモリーカードがすぐ一杯に
1枚約50MBで、バッテリー2個分の200枚撮影すると、約10GB。最低でも16GB以上のメモリーカードを用意した方がいい。

画質に関して

■Foveon4600万画素に耐えるレンズは存在するのか、という疑問を払拭
Foveonセンサーはローパスフィルターを搭載していないので、レンズの粗までダイレクトに描写してしまう。同じMerrilセンサーを搭載しているSD1が発売された時、シグマ最高の標準ズームレンズを持ってしても、粗が見えてしまっていた。コンパクトなDP2 Merrillで、レンズの性能は大丈夫なのか…と心配していたが、さすがはシグマ。Foveon4600万画素に耐えるどころか、凌駕するほどのレンズ性能だった。すごいの一言(【速報】DP2 Merrillが中判カメラをも超える超弩級コンデジだった件に作例あり)。

画像クリックで拡大

■思っていたより、色にクセがない
Foveonセンサーは画像処理が特殊で、デビュー当初は独特な色合いだった。そこからどんどん改善され、今回のDP2 Merrillもとても素直な発色になっていた。シグマの山木社長がフォビオンブルーを搭載しようかと発言するくらい、色にクセはない。
”フォビオンブルー”として熱心なユーザー様に知られる、SD9的な色再現を実現するモードを現在の製品(‪#SD1M‬, ‪#DP2M‬)に追加することを検討しています。一部のお客様からは強いご要望をいただいておりますが、いかがでしょうか?

■45mmの画角はベスト
DP2 Merrillには焦点距離30mmのレンズが付いていて、35mmカメラ換算有効画角で言うと約45mm。この45mmという画角は、人間の目に最も近い、自然な画角だと感じる。一般的に標準画角は50mmだと言われているが、35mmのフルフレームでの対角線は43.27mm。50mmだと少し望遠に感じる人も、45mmだと素直に標準レンズとして使うことができる。

■DP2xと比較して露出は暗め
DP2xの露出は個人的にオーバーに感じていたので、今回のDP2 Merrillくらいがちょうど良く感じる。ただ、構図内に明るい部分があるとかなり暗めの露出決定をするので、ヒストグラムを見ながら、露出補正する必要あり。

■相変わらずダイナミックレンジが広い
画素ピッチが狭くなったことで、ダイナミックレンジが狭くなってしまうのではと心配していた。全く問題なし。むしろシャドウ側の階調が恐ろしく進化していることに驚いた。後処理で明るくしても、階調が残っているので、違和感がない(ノイズはまた別の話として)。

■SIGMA PHOTO PROのパラメータには慣れが必要か
Merrillセンサーが搭載され、SPPのバージョンが5.3になったことにより、設定できるパラメータがかなり増えた。ISO感度によって発色の濃さが違い、ノイズの出方も異なるので、パラメータによる仕上がりの違いを調べてみる必要がありそう。特に、ノイズリダクションのパラメータ設定が難しそう(ノイズリダクションのかけ方によって、シャープネスの度合いも変わってくるので)。

ノイズに関して

■低感度ノイズは…
ISO AUTOではISO200〜800が自動で選択される。最初AUTOで撮ってISO200の写真を見て、「ISO200でもノイズが出てしまうのか…」と驚いた(DP2xのISO200はノイズレスだった)。試しにISO100で撮ってみたら、ほぼノイズレスになった。ISO200のノイズが気になる人はISO100での撮影がオススメ(ISO200のノイズは、気になる人と気にならない人がいるはず)。同じMerrillセンサーを使っているSD1はISO100が基準なので、おそらくISO100にしても極端に白飛びしやすいようなことはないはず(まだ詳細なテストはしていないが、ISO100で異常な白飛びを感じたことはまだない)。

■高感度ノイズは…
ISO100がベストのノイズと発色で、そこからISO感度を上げると、色が薄く、また暗い部分にパープルとグリーンのノイズがまだらに乗ってくる。ISO1600以上では、パープルのノイズがひどすぎて、カラー写真では全く使えない。SPPの画像処理のプロセスにも問題があるような気がする。

■縞ノイズは…
暗部に乗ってくるパープルとグリーンのノイズとは違い、空の明るい部分に縞々のノイズが乗ってくる場合がある。乗らない場合もある。ノイズリダクションのパラメータをもう少し細かく見ていく必要がありそう。

その他、注意事項など

■画素数が多いけど、ブレやすいの?
Foveonは1画素に付き3色で記録しているので、Foveon4600万画素はAPS-Cサイズのベイヤーセンサー1500万画素クラスと同等のブレやすさ。特別ブレやすいわけではない。それよりも、一眼レフと比べてミラーショックなどがないので、その分ブレにくい。(1/35mm換算の焦点距離)秒より速いシャッター速度ならブレにくいという昔から伝わる経験則で対応できる。つまりDP2 Merrillなら、1/50秒より速ければ速いほどブレにくいということ。日中屋外なら、絞りやISO感度設定でシャッタースピードを調整すれば、問題ない。ただ、室内手持ち撮影はなかなかきつい。

■センサーが大きくなった分、被写界深度に気を付ける必要あり
ほぼパンフォーカスで撮るならF6.3くらいでもいけるかと考えていたが、DP2xと比較してセンサーが大きくレンズの焦点距離も長くなったため、もう少し絞る必要があった。「絞りすぎるとシャープネスが…」と心配していたのもあまり絞らなかった理由の一つでもあるが、レンズ性能に問題はないのでパンフォーカスならもっと絞った方が良い。

■タイミング重視、気軽にどこでも何枚も、という撮り方には向かない
今までのDPシリーズ同様、タイミング重視で気軽にどこでも何枚もという撮り方には向かない。高感度撮影に弱く、手ブレ補正も付いていなくて、処理に時間がかかり、ファイルサイズが大きいので、そういう撮り方には向いていない。そういう用途にはソニーのRX100辺りがいいと思う。用途に合わせて使い分けられるのがベスト(買うお金があれば)。

■重い中判カメラと頑丈な三脚を持ち歩くよりもDP2 Merrillと軽い三脚
重い中判カメラと頑丈な三脚を持ち歩くことを考えれば、コンパクトなDP2 Merrillに三脚を組み合わせるのは悪くない。三脚自体もある程度軽くて大丈夫なはずなので、ISO100でじっくり撮影すれば、きっと満足のいく仕上がりになる。「写りの良い高級なコンデジ」と考えるよりも、「中判カメラ以上の写りで驚異的な小ささの格安デジカメ」と考えた方が間違いがない。

■ホッカイロいらず
使っているとすぐボディが温かくなってくるので、冬はきっとホッカイロいらず。

■とりあえず今のところ気付いたバグはない
初期ロットを買うのは非常に怖かったが、今のところ気付いたバグはない。説明書の記載内容は少しおかしかったが(内蔵フラッシュの記述など)、DP2 Merrill自体のバグにはまだ気付いていない。素晴らしい完成度。



ということでSIGMA DP2 Merrillは予想以上に完成度が高くて驚いています。新規にボディやレンズを作り直して、また新たなバグでも発生するのではと心配していましたが、完成度の高かったDP2xよりもさらに進化していました。レンズの性能が素晴らしいので、Merrillセンサーの良さを最大限発揮させることができます。ボディの質感や操作性も良いので、持っていて嬉しくなるカメラです。欠点は、4600万画素のデータ処理に時間がかかることと、バッテリーがあまり持たないことくらいです。最高の画質を追求するポイントは、ISO100でじっくり撮ること、だったりするので、そういう使い方をするなら、欠点もたいした欠点ではないかもしれません。相変わらず使い手を選びますが、うまく撮れれば中判カメラ以上の写真が撮れるすごいカメラです。





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