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緑茶と海水と水道水、基準が一番厳しいのはどれだ

2011年06月27日
海水浴場における放射能濃度測定方法について」では、海水の基準が水道水よりも厳しいことを紹介しました。海水の放射性セシウムの基準値は、1リットル当たり50ベクレルに設定されています。一方、毎日の生活に欠かせない水道水の暫定基準値は海水の4倍の1リットル当たり200ベクレルに設定されています。

緑茶の基準は海水よりも厳しい!

さて、最近では緑茶の基準値が話題になったりしています。この前、鹿児島産の緑茶を買ったところ、追加でこんなメールが来ました。
栽培地はどこか?等のお問い合わせをいただいており、改めてご案内しております。茶袋の裏面の「製造者」として、私どもの表示がございますのは、袋詰めをして「商品として製造した者」と言う、当局のご指導による表示で、栽培地とは異なります。
鹿児島産の緑茶葉が群馬県で袋詰めされたことに対して、不安に思った人が多かったために届いたのだと思います。

緑茶の基準値は、他の野菜と同じ1キロ当たり500ベクレルです。「茶葉は野菜なのか?」と言われるとかなり疑問で、飲用茶として飲む場合、野菜と同様の基準ではおかしいという声があがるのも当然です。

静岡知事「飲用茶にすれば問題ない」によれば、飲用時には茶葉の100分の1に薄まるそうです。つまり、1キロ当たり500ベクレルの茶葉から飲用茶を作る場合、1リットル当たり5ベクレルの緑茶ができあがるということになります。緑茶の場合は、水道水よりも厳しい海水よりもさらに厳しい、1リットル当たり5ベクレルというかなり厳しい基準が設定されていることがわかります。

緑茶と海水と水道水の基準値

緑茶と海水と水道水の基準値を表にしてみると次のようになります。

種類 放射性セシウムの基準値
緑茶 5ベクレル/L
海水 50ベクレル/L
水道水 200ベクレル/L

水道水の基準が200ベクレルであることを考えれば、緑茶の5ベクレルなんて全然たいしたことないことがわかります。

静岡県の知事が「茶葉が1000ベクレルでも問題ない」と発言しているのは、ある意味で正しいと言えます。ただし、茶葉の利用方法については、茶葉をそのまま食べたり、ふりかけにしたり、天ぷらにしたりする人もいます。そのため、一応野菜の基準値を適用したというのが国の方針です。

各国の水道水基準

参考までに、各国の水道水基準や日本の福島原発事故前・事故後の水道水基準、原発の排水基準を見てみましょう。

水の種類 放射性セシウムの基準値
アメリカの法令基準 0.111ベクレル/L
ドイツガス水道協会の基準 0.5ベクレル/L
ウクライナの基準 2ベクレル/L
WHOの基準 10ベクレル/L
福島原発事故前の日本の基準 10ベクレル/L
原発の排水基準 90ベクレル/L
福島原発事故後の日本の基準 200ベクレル/L

元々、日本の水道水の基準は10ベクレル/Lでした。それが、今回の福島原発事故後に暫定基準値として200ベクレル/Lに引き上げられました。国内の原発の排水基準は今も昔も90ベクレル/Lですから、実は原発から流れ出てくる排水を直接ごくごく飲んでも安全だったようです。

今現在の海水と水道水に含まれている放射性セシウムの量

次は、今現在の海水と水道水に含まれている放射性セシウムの量も考えてみましょう。基準値がゆるくなったことで不安を覚える人もいると思います。大事なのは、「今現在の放射性セシウムの量」です。これを知っておかないと、「怖い」という不安だけで風評被害を生み出してしまいます。

今現在(6月下旬)の海水と水道水と緑茶(基準限界の1キロ当たり500ベクレルに設定)に含まれている放射性セシウムを表にしてみると以下の通りです。

種類 放射性セシウムの基準値
緑茶 5ベクレル/L
海水 不検出
水道水 不検出

現在、福島県の一部を除き海水からは放射性セシウムが検出されていませんし、水道水からも放射性セシウムは検出されていません。

「不検出」とは何か

「不検出」とは、放射性セシウムが0ベクレルであることを保証するという意味ではなく、検査の下限以下であるという意味です。測定下限値は自治体によって異なり、10ベクレルだったり、5ベクレルだったり、50ベクレルだったりといろいろです。仮に、ここで測定下限値が10ベクレルの検査方法で緑茶を検査したとすると、次のようになります。

種類 放射性セシウムの基準値
緑茶 不検出
海水 不検出
水道水 不検出

ということで、市場に出回っている茶葉から飲用茶にしても問題はないことになります(静岡県知事は1000ベクレルの茶葉でも問題ないと言っています)。「静岡茶のブランド」という観点から見ると、そこは突っ張るべきではなく、東電と政府に賠償を請求するべきだと個人的には思いますが…。

「安全な被曝量は存在しない」を信じるのなら…

今月発売された、小出裕章助教授のベストセラー「原発のウソ」によれば、
“安全な被曝量”は存在しない!
とされています。

「少しでも被曝量を減らしたい」と考えている人が、放射性セシウムを大量に含む茶葉を避けるのは何もおかしいことだとは思いません。無農薬野菜や有機野菜を求める人と同じようなものです。一方で、「基準値を超えたみたいだからなんとなく怖い…」というだけで避けている人は、風評被害に荷担していると言えるのかもしれません。

また、一番茶については東京電力福島原子力発電所が水素爆発を起こしたときに飛んできた放射性物質の影響が大きく、放射線の数値が高く出ています。二番茶からは、水素爆発時の放射性物質の影響は少なくなり、放射線の数値は大幅に低くなるはずです。迅速な検査と公表、それから正しい知識を持つことが、風評被害を防ぐ上で重要です。精神論ではなく、データで安全性を示すことが大切だと思います。