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“海外流出”の今

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2010年10月10日 カテゴリ:雑記


今年のノーベル化学賞は、根岸英一さんと鈴木章さんの日本人2博士が受賞しました。海外での研究成果を認められての受賞でした。こういった海外での活躍は、今までなら「海外への人材流出」などと呼ばれてもおかしくなかった事例です。

ところが今年は、今までとはまるっきり正反対に「若者よ、海外に出よ」とばかりに、最近では海外にチャレンジしに行く人がいなくなった、と嘆かれてしまっています。

「批判されながらも先駆者が海外へ出て行き成功を遂げ、海外へ出て行くことが一般的になっていき、その後海外にチャレンジすることが少なくなってきてまた批判される」という事例は、何もノーベル賞に限ったことではありません。

例えば、競馬の世界でも同じようなことが起きました。日本馬のレベルが上がり、海外挑戦で成功する馬が出てきて、海外挑戦する馬が増えてくると、「日本の競馬界は空洞化するのでは…」と心配されたりしました。結局は、海外挑戦するリスクがあまりにも大きかったため、それほど挑戦する馬ばかりになることはありませんでした。「海外挑戦するリスク」を高めたのは、慣れない環境での勝負で調整が難しいこともある他、日本の競馬界の賞金がとても高く(年末の有馬記念で優勝すれば、1億8000万円の賞金が出る)、海外挑戦するよりも、慣れていて安全な日本国内で戦っていた方が良かったからです。海外流出させないように、JRAがうまくやったと言えなくもありません。そんな中でも、今年の凱旋門賞はナカヤマフェスタが2着するなど、一部の競馬関係者は挑戦を続けています。

これと違う例では、例えば野球。野球の場合は、日本で大スターであっても年俸は5億円くらいで頭打ちになってしまいます。ところが、アメリカのメジャーリーグへ行けば、年俸5億円どころか8億円以上もらえたりします。選手にとって年俸の高いリーグへ行こうとするのは何もおかしくないことで、その上、よりレベルの高い環境で戦うことができます。当然海外挑戦のリスクはありますが、リターンも大きく、仮に失敗してもまた日本へと戻ってくることができます。大リーグ挑戦は野茂選手が批判されながらも道を作り、今へと続いています。来年には、パ・リーグを代表するダルビッシュ選手と岩隈選手が大リーグへ行くと噂され、日本野球界のレベルはどんどん下がっていきます。競馬の世界では賞金を上げることで流出を防げましたが、野球の世界ではできません。日本野球界が空洞化し、人気が低迷しているのも当然のことと言えるかもしれません。ただ、今は大リーグで通用するピッチャーが出てきていますが、すでにバッターはなかなか通用しないことがわかってきてしまっています。通用するピッチャーでさえ、今後これ以上大幅に増える見込みはありません。そのうち、「大リーグに挑戦する選手もいない」と嘆かれる時代が来るのではないでしょうか。

サッカーの場合は、中田選手が成功し、続々とJリーガーが海外挑戦し、Jリーグが空洞化するか…と思われたりもしましたが、サッカーの場合は実力面で通用する選手があまり多くありませんでした。一時海外の有名リーグで通用する選手が少なくなったときは、「最近では海外に行く選手さえ…」なんて言われたりしたものですが、最近はまた海外で頑張る選手が増えてきて、日本代表でも海外組と国内組がうまく融合して結果を残しています。


結局、最初に海外へ出ていこうとした人は叩かれ、それを振り切って海外で成功し、それに続いて海外に出て行こうとする人を見て「海外流出だ」と言い、海外へ挑戦する人が少なくなると「最近は海外にチャレンジさえしない」と、どの分野でも言われたりしています。

何かしら叩かないとすまない、自虐的でないとすまないのが日本人、というところでしょうか。挑戦する人に対して、素直に応援するということができないのかもしれません。また、海外へ挑戦することを誇りにしたり、海外での成功を自慢したりしても、叩かれたりします。最近の企業では、社内公用語を英語にしたりするだけでも、叩かれたりしています。この辺りも、なかなか海外で成功する企業が増えない、あるいはそもそも挑戦する企業が増えない原因となっているのかもしれません。

野球の世界では、海外挑戦から3年目でついに11勝の二桁勝利をマークした黒田選手が、「日本に戻るかどうか」を真剣に考えているようです。年俸だけなら当然メジャーの方が高いわけですが、日本に戻って「海外の技術を周りに教えたい」という思いが強いようです(ツーシーム、最近の彼はシンカーと呼んでいる球や投球スタイルを日本で試したり)。

今回ノーベル賞を受賞した鈴木章さんも言っていますが、根岸英一さんの「海外にもっと出なさい」とは、「世界で競争しなさいということと、違う文化に触れて自分の考え方を磨きなさいとのメッセージも込められている」わけです。海外に行く行かない、成功失敗だけでなく、そういうチャレンジする精神と、その上で自己を磨き上げることが大切です。海外で失敗したとしても、その経験がどこかで生きる場合は多々あります。そのためにも、挑戦する人のことは「叩く」のではなく、もっと「応援」してあげられれば良いのになぁと思ったりしました。