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α7のファストハイブリッドAFによる位相差AFの効果

2013年11月27日 カメラ・写真
α7ボディ

前回の「α7Rのタイムラグは、安価なα7より8倍以上ある!遅い…」からの続きです。α7Rα7のAF方式には異なるタイプが採用されています。

安価なα7には高性能なファストハイブリッドAFが採用されていて、高価なα7Rには位相差AFを併用することができないコントラストAFのみが採用されています。ハイブリッドなAF方式を採用しているα7の方が断然AFは速そうですが、実際はどうでしょうか。個人的な感想でも述べておきます。

α7Rとα7のAFの違い

まずはα7Rとα7のAFの違いをおさらいしておきましょう。

α7RのAF方式はこの通りです。
速度と精度を両立した新しいコントラストAF「ファストインテリジェントAF」

高速読み出しが可能なフルサイズセンサーと、ピント合わせの際のレンズ駆動ロスを抑える新たな「空間被写体検出」AFアルゴリズムを備えた高速画像処理エンジン「BIONZ X」が連携し、画像処理エンジンとレンズ間で行われる通信を最適化した高速レンズ駆動制御システムを開発。これにより、本来のコントラスト検出方式AFの精度の高さに加え、AF速度を従来比で約35%短縮(*)した「ファストインテリジェントAF」をα7Rに搭載。有効約3640万画素のフルサイズセンサーによる圧倒的な高画質を生かしながら、一瞬のシャッターチャンスを逃さず捉える高速AFを実現しました。

商品の特長 | α7R | デジタル一眼カメラ“α”(アルファ)[Eマウント] | ソニー

α7のAF方式はこの通りです。
速度、精度、追随性のすべてが進化した「ファストハイブリッドAF」

高速読み出しが可能なフルサイズセンサーと、ピント合わせの際のレンズ駆動ロスを抑える新たな「空間被写体検出」AFアルゴリズムを備えた高速画像処理エンジン「BIONZ X」が連携し、画像処理エンジンとレンズ間で行われる通信を最適化した高速レンズ駆動制御システムを開発。これにより従来のコントラスト検出方式AFと比べ、AF速度を約35%短縮(*)した「ファストインテリジェントAF」を新開発。α7では、さらに追随性と高速性に優れた位相差検出方式AFも搭載することで、2つのAFを併用する「ファストハイブリッドAF」が進化しました。AFの精度と速さが高まっただけでなく、追随性性能も向上し、有効2430万画素でのAF追随約5コマ/秒連写を実現しました。

商品の特長 | α7 | デジタル一眼カメラ“α”(アルファ)[Eマウント] | ソニー
α7ファストハイブリッドAF

どちらもコントラストAFには、新開発の「ファストインテリジェントAF」が採用されていて、α7にはそこからさらに位相差検出方式AFも搭載されているということです。

ファストインテリジェントAFの効果は?

α7には、コントラストAFと位相差AFが使えるファストハイブリッドAFが採用されています。一方、α7Rには位相差AFは搭載されずコントラストAFのみが採用されています。

これだけを見ると、「α7RのAFは遅いのか?」と疑問に思ってしまいそうです。

実際のところは、α7もα7RもそれほどAFスピードに変わりがない状況が多いと予想されます。なぜかというと、新開発のファストインテリジェントAFは、従来のコントラスト検出方式AFと比べて、AF速度が約35%も速くなっているからです。空間被写体検出AFアルゴリズムが非常に優秀で、その上BIONZ Xエンジンにより、高速に処理されています。したがって、コントラストAFそのものがかなり速いです。今まで、AFアルゴリズムの良くないメーカーのカメラやレンズも使ったことがあるので、ソニーの新しいAFアルゴリズムが優秀であることは、使っていてすぐにわかります。

「コントラストAFなのに、AFが食いつく!」

コントラストAFのアルゴリズムが良くないと、前回とほぼ同じピント位置でAFを合わせたときでも、毎回前後に大きくレンズが駆動してしまって、イライラすることがあります。悪いアルゴリズムだと、前後にフォーカスを合わせるスピードが常に一定で、毎回ピント合わせに時間がかかったりします。少し優秀なアルゴリズムになると、フォーカス中にピント面が大きく外れていることに気付いたときは、レンズ内モーターを高速に動かして、AFを高速化させたりしています。

今回搭載されたファストインテリジェントAFは非常に優秀で、大きく前後にピント移動しないで、即スッとピントが合う確率が高いです。優秀です。うまくピント面を検出できなかった時などは前後に動きますが、それほど大きく動かさずにすぐピントが合うことも多く、不満を感じさせません。

これはおそらく、「空間被写体検出」AFアルゴリズムのおかげです。ピント位置を正確に検出して、AF速度を速めているのだと思われます。ここで言うAF速度とは、レンズを動かすモーターのパワーのことではなく、実際にAFが合焦するまでの時間のことです。アルゴリズムが優秀で、モーターを動かす時間そのものが減っているので、結果的にAF速度が速く感じるようになっています。

α7のファストハイブリッドAFによる位相差AFの効果は?

α7では、新開発のファストインテリジェントAFに加えて、位相差AFも併用されています。

「優秀なコントラストAFに加えて位相差AFもプラスされれば、圧倒的にAFが速くなる!」

と考えてしまいそうなところですが、現実にはそれほど変わりませんでした。

コントラストAFが優秀になった結果、位相差AFが活躍しなくてもなんとかなっている状況が多いです。位相差AFが効く範囲というのは、中央の限られた範囲のみで、ここにピント面があったときにハイブリッドなAFが動きます。AF位置をフレキシブルスポットSで端の方に持って行き、位相差AFが効かない位置でピントを合わせれば、位相差AFが効く場合と効かない場合でテストできるはずです。位相差AFが効かない環境は、ソニーのQ&Aページに載っています。
以下のような場合には位相差AFは機能せず、コントラストAFでピント合わせを行います。

・被写体が位相差AF測距点の範囲外にあるとき
・ファストハイブリッドAFに非対応のレンズを装着しているとき
・マウントアダプターを装着しているとき
・暗い環境下のとき
・絞り値がF6.3より大きい時 (NEX-5R、NEX-5RL、NEX-5RY、NEX-5T、NEX-5TL、NEX-5TY、NEX-6、NEX-6L、NEX-6Y )
・絞り値がF8.0より大きい時 (ILCE-7)
・青空や白壁などコントラストのない被写体を撮影しているとき

ファストハイブリッドAFの位相差AFが機能す... | Q&Aページ | Q&A | デジタル一眼カメラ“α”(アルファ) | サポート・お問い合わせ | ソニー

位相差AF測距点の範囲内と位相差AF測距点の範囲外で、それぞれテストしてみた結果…

「位相差AFの範囲内の方が、AFの食いつき率が少し上がる」

という程度のものでした。

位相差AFが働いていると、コントラストAFのみの場合に比べて、AFが大きく外れる率が低いように感じます。もちろん位相差AFがあったときの方が快適に感じますが、なくてもそれほど不満には感じません。ファストインテリジェントAFだけでもピント面を検出できていることが多く、AFがあまり迷いません。AFが迷わなければ、位相差AFとのハイブリッドでなくても、AFは十分速いです。

これはα7キットレンズのFE 28-70mm F3.5-5.6 OSSのレンズで試した場合で、レンズによって多少変わってきます。このキットレンズの場合は、位相差AFがあってもなくてもそれほど変わらないです。

それと、室内でテストしてみたところ、絞り値を変えると明らかにAF速度が変わりました。絞ると、位相差AF測距点の範囲内でも範囲外でもAFが遅くなります。絞ったときは、「暗い環境下のとき」と判断されるのかもしれません(F8未満でも遅くなっています)。

いろいろなレンズで試してみた結果

試しにAPS-C用のレンズであるE PZ 16-50mm F3.5-5.6 OSSを試したところ、位相差AFがあってもなくても、どちらも非常に高速でした。コンパクトで優秀なレンズです。レンズ自体が軽いおかげかAF速度も速いです。

APS-C用望遠レンズのE 55-210mm F4.5-6.3でも試したところ、こちらは位相差AFと併用した方が満足度が高そうな動きをしていました。ピント面さえ検出できればAFは高速です。ピントが検出できていないと遅くなってしまうレンズなので、位相差AFの効果がフルに発揮されそうです。

よって、広角系レンズだとコントラストAFのみでも十分なスピードが出ていて、望遠系レンズだと、位相差AFとのハイブリッドAFの方がより良さそうに感じました。現状、フルサイズEマウントには望遠レンズが存在せず、ロードマップを見てもFE 70-200mm F4 G OSSの一本しか開発が予定されていません。ハイブリッドAFが搭載されていないと困るシーンというのも、まだあまり無さそうです。

それよりも、上記APS-C用レンズ2本で、「なぜか手ぶれ補正が使えない」という仕様に驚きを隠せません。ソニー純正レンズなのに、α7では手ぶれ補正が使えないという謎の制限です。「α7(ILCE-7) レンズ互換情報」のページにサラッと手ぶれ補正が効かないと掲載されているだけで、理由が全くわかりません。望遠写真はAPS-CクロップでE 55-210mm F4.5-6.3を使おうと考えていただけに、この制限はショックです。


おまけで、シグマ 30mm F2.8 EX DN ソニーEマウント用もα7に付けてAF速度を確認してみました。シグマのレンズだと、アルゴリズムや通信速度がソニーに劣っていて、AFがスッと合う率が低いです。そして位相差AFも効かないので、ソニー純正に比べるとAFは遅いです。それでもイライラするほどの遅さはありません。普通に使えるレベルです(イライラするEマウント用レンズのレビューは、「Touit 1.8/32 はAFがちょっと残念」をどうぞ)。

まとめ

まとめると、ファストハイブリッドAFによる位相差AFの効果はそれほど高くなく(コントラストAFのレベルが高いので)、α7Rとα7のAFの差もそれほどないのではないか、と予想できます(実際にα7Rを使って実験したわけではないので予想になります)。新開発のファストインテリジェントAFがかなり優秀です。

したがって、高価なα7RにはハイブリッドAFが搭載されずコントラストAFのみであるとは言え、心配するような遅さではないと思われます。「α7Rのタイムラグは、安価なα7より8倍以上ある!遅い…」に比べれば、AF速度の差は気にするようなレベルではないです。

このままコントラストAFが進化し続けると、もしかすると像面位相差AFそのものの必要もなくなってしまうのでは…という気もしてきます。α7には、他にもロックオンAFや瞳AFのモードなどもあります。動画時のAFもあります。それぞれのモードで、またハイブリッドAFの使用感が違うかもしれません。あくまでも今回は静物撮影時テストの一個人の感想ということで参考にしてみてください。


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