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ニコンからレトロ風な外観の一眼レフ「Df」が発表!

2013年11月05日 カメラ・写真
本日11月5日、ニコンからレトロ風な外観が特徴の新型デジタル一眼レフ「Df」が発表されました。 ニコンDf


こういうクラシックなデザインのカメラが発売されると、思い出す言葉があります。ニコン後藤哲朗氏の言葉です。
“写真を撮らない人が作ったカメラ”というのは、あまりにもとび過ぎた方向、あるいは超クラシックな方向に行きがちです。もちろん、写真の歴史は長くて、加えて趣味・嗜好品の世界もあります。実用性だけではなく、過去の歴史も大切です。単にクラシックというのではなく、過去の歴史を大切にしながら、写真を撮影し、作品を生み出すことを知っている現代的なカメラとサービスが求められているのではないでしょうか

後藤哲朗氏本人に訊く:ニコンが設立した「後藤研究室」とは - デジカメWatch

クラシックデザインなだけのカメラは、「写真を撮らない人が作ったカメラ」であり、使い勝手の悪いカメラであることが多々あります。デザインが行き詰まったからクラシック風にしただけで、そこに機能的な必然性が含まれていなかったりします。

今回発表されたニコンDfは、噂によると、後藤研究室主導で開発したという話です。「写真を撮らない人が作ったカメラは、超クラシックな方向に行きがち」と警告していた後藤研究室から、クラシックなデザインのカメラが登場しました。果たして今回のレトロ風なデザインのカメラDfは、「単にクラシックというのではなく、過去の歴史を大切にしながら、写真を撮影し、作品を生み出すことを知っている現代的なカメラとサービス」が実現できているのでしょうか。

ニコンDfの特徴やスペックを追ってみましょう。

カメラ正面:半世紀以上前の非AIレンズがそのまま使える!

ニコンDfは外観がレトロなだけではなく、なんとレトロなレンズもそのまま使えます!
ニコンDf

ニコンFマウントの歴史は長く、ニコンが一眼レフカメラを初めて発売した1959年から現在まで、一眼レフカメラのレンズマウントの機械的な形状を変更することなく、一貫して「ニコンFマウント」が採用されています。54年前のレンズが、現代の最新カメラでもそのまま使えるわけです。外観だけクラシック風なカメラとはここが大きく違うポイントです。「Df - 使用できるレンズ | ニコンイメージング」には、古い非AI方式レンズでもフォーカスエイドが使えると書いてあります。D4やD800では使えなかったレンズが使えるようになっているわけです。最新機能です。

カメラ上面:操る愉しさを実感できる直感的なダイヤル操作

Dfは、カメラ正面にたくさんの金属製メカニカルダイヤルが並び、マニュアルで直感的な操作が可能な配置となっています。
ニコンDf

カメラの上面で、ISO感度、シャッタースピード、露出補正をいつでも設定できるようになっています。また、絞りリング付きのマニュアルレンズであれば、レンズ側で絞りを設定できます。左下には「MADE IN JAPAN」の文字。おそらく仙台で作られていると思われます。

このように、Dfの上面は直感的なマニュアル操作を実現できる配置となっています。注目すべきところは、ダイヤル類が設置されている上面は、直線であること。最近のニコンのカメラデザインは、使いやすい流線型のデザインではあるものの、格好良さとは離れていっている感じがありました。このような直線的なデザインには無骨な格好良さがあります。

カメラ背面:現代的なボタン配置

Dfの正面、上面は見事にレトロなデザインでした。一転、背面は現代的なデザイン配置です。
ニコンDf

背面だけ見たら、レトロ風デザインのカメラであることを忘れてしまいそうです。このような配置になっているのはおそらく、「他のニコンカメラと併用しても迷わない操作性」を重視したのではないかと思います。基本的なニコンのカメラと同様のボタン配置なので、迷わずすっと使えそうです。過去と現代の融合です。右手親指部分には盛り上がりがあって、これのおかげでグリップ力も高まりそうです。

内部スペック:他のカメラからの流用でコスト削減

外観をチェックし終わったところで、次は内部スペックをチェックしてみましょう。今までと一風変わった外観とは違い、内部的には驚くような新機能はそれほどありません(非AI方式のNIKKORレンズが装着できる部分だけ)。

スペック 説明
イメージセンサー 1625万画素 フラッグシップ機D4と同じ
画像処理エンジン EXPEED3 最新のEXPEED4ではなく、旧型のEXPEED3
AFシステム マルチCAM 4800オートフォーカスセンサーモジュール(39点AFシステム、9点はクロスタイプ) D610と同じ
シャッター 最高5.5コマ/秒、最速1/4000秒、レリーズタイムラグ約0.052秒 D610と同等
動画撮影機能 なし 敢えて搭載せず
非AI方式のNIKKORレンズ 装着可能 フルサイズデジタル一眼レフ初

シャッターやAF周りなどは、優れているD800から持ってきたものではなく、ワンランク下のD610と同等性能となっています。撮影性能よりも、携行性を重視した内部構成のようです。

イメージセンサー:フラッグシップ機D4と同等

イメージセンサーは、高画素で好評のD800と同じ約3600万画素のイメージセンサーは採用されませんでした。これはおそらく、3600万画素の画像を処理するのは荷が重いという判断ではないでしょうか。となると、次はD610の約2400万画素イメージセンサーが考えられます。しかし、こちらも採用されませんでした。採用されたのは、フラッグシップ機D4と同等の1625万画素イメージセンサー。2400万画素と3600万画素のイメージセンサーはソニー製、D4の1620万画素イメージセンサーはニコン設計のイメージセンサーです。D4の1620万画素イメージセンサーは、D700系統の流れを組む高感度に強いタイプのイメージセンサーです(カラーノイズと暗部ノイズが少なく、後処理で扱いやすい画像が得られる)。ニコンでは、機種名「Df」の「f」にあたる部分を以下のように説明しています。
手応えのある直感的なダイヤル操作と精密機械の感触および「D4」と同等の画質を、携行性の高い小型・軽量ボディーに融合(fusion)することをコンセプトにしています。

Nikon | ニュース | 報道資料:手応えのある直感的なダイヤル操作と、「D4」と同等の画質をニコンFXフォーマット最小・最軽量ボディーの中で融合したニコンデジタル一眼レフカメラ「Df」を発売
「fusion」を強調するために、敢えてD4の1625万画素イメージセンサーを採用したようです。今から一年近く前に、実はニコンDfの開発情報が漏れていました。そのときは、3600万画素か2400万画素のイメージセンサーを採用予定でした。途中で、D4用のイメージセンサーに変わったようです。画像処理エンジンには、最新のEXPEED4は採用せず、D4と同じEXPEED3を採用して、同等画質をアピールしています。D4と同等画質でここまで小さくなったと考えると、Dfのすごさがわかります。
ニコンDf

なお、ムービー撮影機能は敢えて搭載されませんでした。「一眼レフカメラにムービーはいらない」という一部ユーザーの声に応えるとともに、ムービーボタンの削除にもつながり、デザイン性も犠牲にしなかったのだと思われます。

重さ:ニコンのフルサイズ一眼レフ最軽量

Dfで注目すべきは、重さです。自分は今ニコンD700を使っていて、大きさと重さ以外には大きな不満はありません。ただ、重いのだけは本当に嫌です。D700が発売されたあと、長い期間が空いて、95g軽くなったD800が発売されました。その後、さらに軽量化されたD600が発売され、重さは760gまで軽くなりました(その分、機能的には上位機種に劣っています)。そして今回発表されたDfは、重さ710gです。以下に、ニコンフルサイズ一眼レフの重さを並べてみました。

カメラ 重さ
(本体のみ)
D700 約995g
D800 約900g
D610 約760g
Df 約710g

995gのD700と比べて、Dfは285gも軽くなりました。これは大きなポイントです。ボディー上面カバー、背面カバー、底面にマグネシウム合金が採用され、小型軽量ながら、高い堅牢性と高耐久性が実現されています。また、D800シリーズと同等の防塵・防滴性能が確保され、過酷な環境にも耐えるタフなカメラに仕上がっています。

まとめ

ニコンDfは、レトロ風な外観のデザインに、中身には最新のデジタル性能が融合され、古いレンズから新しいレンズまで使えるカメラに仕上がっています。大きさ重さも、ニコンのフルサイズ一眼レフでは最小最軽量が実現されています。

古いレンズが使いたい人、D700が重くて耐えきれない人、レトロ風なデザインが好きな人、機械的な操作性が好きな人、いろいろタイプの人にアプローチできるカメラに仕上がっているのではないでしょうか。ただクラシック風なデザインだけでなく、現代的なデジタル性能と融合しています。まさにfusionです。もちろん、このカメラがニコンのメインストリームではないので、一つの実験作とも言えます。成功するかどうかは、今後の売れ行き次第ですね。


追記

ニコンDfの発表会で後藤哲朗氏が企画説明 - デジカメ Watch」が掲載されました。
・カメラ自体は「肩の力を抜いて、写真を撮ることに専念してもらう製品
・昨今のデジタルカメラは「どれも右へならえで、ロゴを隠せばみな同じ」と感じ、(カメラに)“使われ(ている)感”、がある
・撮影枚数や歩留まりを意識するなら通常のデジタル一眼レフカメラでいいが、今回の機種はちょっと違う
・社内で反応を聞いて回ったところ、後藤氏が「30年やっていて、ここまでまっ二つに分かれたのは初めて」と語るほどの賛否両論だった
・“後ろ向き”、“アナクロ”、“そんなに暇ならもう1機種つくれ”などと言われた
・工場も含め写真を撮っているメンバーからは大賛成。ぜひ開発したいというメンバーがあった。上層にも協力な賛同者があり、なんとか開発できた
・往年の名機を彷彿とさせ、カメラが精密機器であることを再認識させる造形美
・既存のデジタル一眼レフカメラはエルゴノミックデザインで家電側に振れているのでは
・自然災害などあり、開発の予定も狂った。沈静化まで時期を待った
・効率よく写真を撮るだけでなく、カメラを持ち歩いたり、1日の会心の1枚が撮れるようなカメラがあってもいいのではないか
・担当したカメラに一度も100点をつけたことはない。今回もとても及ばない点がある
・(Dfが)予定通り・予定以上に売れてニコンブランドが向上し、反対派がいなくなれれば、またできる。そのときはやりたい
「そんなに暇ならもう1機種つくれ」と社内からも反対がある中でDfの開発を始め、東日本大震災やタイの洪水等を乗り越え、ようやく発売できたようです。次回作が開発できるようになるかどうかはわかりませんが、うまく軌道に乗るといいですね。