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シャッター速度を変えて、水の流れを表現してみよう!

2008年06月02日 カメラ・写真
絞り値、シャッター速度、被写界深度の関係を覚えよう!」の続きのエントリです。前回は、絞り値を変化させることによって被写界深度が変わり、ボケ具合が変化することを解説しました。今回は、シャッター速度を変えることによって、撮影した写真にどのような変化が現れるかを解説します。変化を体感するには、実際に撮った写真を見てみるのが一番ですね。

シャッター速度による違いを実感することができる被写体として、常に流れている水を選びました。常に流れている水といえば、「」。というわけで、シャッター速度による違いを解説するために、 日本三名瀑のひとつ、茨城県大子町にある「袋田の滝」(他二つは、華厳の滝と那智の滝)まで撮影しに行ってきました(神奈川県の自宅から片道200km以上)。



この左に写っている建物から大迫力の滝を撮影してきました。当日は雨が降っていて、水量水流ともに激しい袋田の滝でした。屋根はあるものの手すりのある一番前まで行くと、雨が飛んできてなかなか撮影しにくい状況でした。
袋田の滝は、四季の変化が美しい滝として有名です。今の時期は新緑がきれいで、秋は紅葉が美しく、冬は滝が凍りアイスクライミングをする人までいるそうです。

少し雨にかかりながらシャッター速度別に同じ被写体で8枚の広角写真を撮りました。詳しい解説は後にするとして、まずは実写サンプルをどうぞ。(リサイズしたため、小さいサイズのままではわかりにくくなっています。各写真をクリックすることで、大きな元画像が表示されます)

シャッター速度:1/1000秒 シャッター速度:1/400秒
シャッター速度:1/200秒 シャッター速度:1/80秒
シャッター速度:1/15秒 シャッター速度:1/5秒
シャッター速度:1秒 シャッター速度:2秒


シャッター速度について

シャッター速度とは、感光体(フィルム、CCD、CMOS等)に露光を与える時間のことで、露光している時間の映像が撮影されることになります。シャッター速度は、シャッタースピードと呼んだり、SSと略したりします。日中の太陽光下で、ISO感度100、絞りf5.6だと、約1/1000〜1/250秒くらいが適正なシャッター速度だと言われています。1/1000秒というと、人間にはとても制御しにくい時間です。最近のカメラはシャッターレリーズボタンを押すことによって露光が開始(レリーズ)され、自動的にシャッター速度通りの時間にシャッターが閉じるようになっています。シャッターについては、シャッター (カメラ) - Wikipediaなどに詳しく載っています。

前回の「絞り値、シャッター速度、被写界深度の関係を覚えよう!」で解説したとおり、シャッター速度が速くなれば、それだけ取り込む光の量が減り、暗い写真になります。もしシャッター速度を2倍にしたい場合は、絞り値を1段分開いて光を取り込むことで、シャッター速度変化前の露出と同じになります。

また、ISO感度を設定することによってもシャッター速度を変化させることができます。ISO感度は、数値が大きくなるほど感度が増し、ISO100、ISO200、ISO400、ISO800、ISO1600...のように変化していきます(中間のISO感度を設定できるカメラもあります)。ISO感度が2倍になるごとにシャッター速度1段分、つまりシャッター速度を2倍にしても同じ露出になります。

例えば、ISO感度を変化させることによって、下表のように絞り値が同じでも、同等の露出を保ったままシャッター速度を変化させることができます。
ISO感度 絞り値 シャッター速度
100 5.6 約1/1000〜1/250秒
200 5.6 約1/2000〜1/500秒
400 5.6 約1/4000〜1/1000秒

ただし、ISO感度を上げれば上げるほど、画質面には悪影響を与えます。デジタルカメラの場合、カメラ本体によって、どれだけのISO感度を常用できるかに大きな差があります。高感度特性が良くないカメラの場合、ISO感度を上げた場合にノイズが乗り、汚い写真になってしまいます。

このように、シャッター速度一つをとっても、絞り値やISO感度などの周りのパラメータと相互に影響し合います。最近のカメラは優秀であるため、「シャッター速度優先モード」に設定して、撮影したいシャッター速度を選択すれば、あとのパラメータは自動的にカメラが決定してくれます。あまり深く考えないでも、「シャッター速度優先モード」にするだけなので簡単ですね。(絞り値も自動的に変わってしまうため、意図しない表現になってしまうこともありえます。その場合は、マニュアルモードを使います)

シャッター速度の違いによる実写サンプルの見方

シャッター速度について簡単に理解したところで、最初に載せた実写サンプルを詳しく見てみることにします。撮影は、APS-Cサイズのデジタル一眼レフカメラ、焦点距離17mmで「袋田の滝」を正面から撮影したものです。わかりやすく中心部分のみ切り出して、水がどのように写っているかを解説します。

■シャッター速度:1/1000秒、絞り値:F2.8、ISO280の場合

シャッター速度が1/1000秒と速い場合、水が飛び散る瞬間を写し出すことができます。シャッター速度を稼ぐために、レンズの絞りは開放に設定し、ISO感度も高くしてあります。この日は雨が降っていて水流が速く、1/1000秒でもまだ遅いくらいかもしれません。シャッター速度を速くすれば速くするほど、激しく動いているものでも、止まった状態として撮影できます。


■シャッター速度:1/80秒、絞り値:F6.3、ISO100の場合

続いて、シャッター速度1/80秒。1/80秒という短い時間にも、滝の水が流れ続けていることがわかります。カメラのオートモードで撮っている場合、このような写りの写真になることが多いと思われます。


■シャッター速度:1/5秒、絞り値:F20、ISO100の場合

続いて、1/5秒までシャッター速度を遅くした写真です。水の流れが白い線のようになり、写真特有の表現ができるようになっています。肉眼でとらえることのできない表現も、シャッター速度を変えることによって、写真で表現可能になります。


■シャッター速度:2秒、絞り値:F32、ISO100のの場合

さらにシャッター速度を遅くして2秒で撮影しました。絞りも最大のF32になっています。露光量が多く写真も明るくなり、これくらいのシャッター速度が限界です。最大まで絞ったため、元画像を見るとレンズ全面のフィルターに付いた水滴まで写り込んでいます。(前から雨が飛んでくるので大変でした。写真下部に手すりが見えているのは、雨を嫌って少し下がってしまったためです)

シャッター速度を変化させることで…

このように、シャッター速度を変化させることで、動いているものの写り具合を変化させて、自分の撮りたい写真が撮れるようになります。どの写真が良いと思うかは人それぞれで、正解というものはありません。動きの速いものをピタッと止めて撮影したい場合はシャッター速度を速くする、あえて動きを表現するにはシャッター速度を遅くしてみる、というようなことを覚えておくと撮影の幅が広がるかもしれません。

簡単にシャッター速度の速さによる長所と短所をまとめておきます。
シャッター速度 長所 短所
速い ・動きあるものを止めて撮影できる(被写体ブレの軽減)
・手ブレを防ぐことができる
・明るい場所で撮影できる
・暗い場所ではシャッター速度を速くできない
・シャッター速度を速くできる、明るいレンズは高価であることが多い
遅い ・動きのあるものを動きのあるまま撮影できる(被写体ブレを起こす)
・暗い場所でも撮影できる
・被写体ブレが起きる
・手ブレが起きやすい
・手ブレを起こさないために、三脚などが必要になる


最近人気のページ「写真がうまくなる36の法則 - Ko's Style」では、
法則30 滝は1/500秒以上の高速シャッターか1秒以下の低速シャッターで撮る
と書かれていました。
」と言っても、滝によっても、また季節や天候によっても表情が変わります。シャッター速度を変えることによってどのような変化があるのか、実際に体験してみることによってその違いがわかるようになります。シャッター速度を変えて、何枚も撮ってみることが大切かもしれませんね。

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