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[AIR解説本の裏話2]印税ってどうなってるの?

2008年01月07日 執筆・掲載履歴
さてさて、[AIR解説本の裏話]の第2回目は、「印税ってどうなってるの?」についてです。
[AIR解説本の裏話1]なぜAIR解説本を書くことになったのかからの続きになります。

依頼されたAIR解説本の情報

前回の内容をまとめると、依頼されたAIR解説本の情報は次のようになっていました。

本のサイズ A5判
本の内容 Adobe AIRの解説記事
本のページ数 160〜250ページ程度
本の価格 1600〜1900円くらい
初版発行部数 2000〜2500部
印税率

印税収入の計算式

印税収入の計算式は、小説家の収入はどれくらい?にも書いたように、一般的に次のようになります。
印税収入 = 価格 * 部数 * 印税率

今回は価格と発行部数がある程度わかっていたので、ここに印税率をかければ簡単に印税収入を計算できるはず!と思ったのですが、ひとつ大きな勘違いをしていることがありました。それは、「部数」の部分です。「小説家の収入はどれくらいなのか?」にも書いたように、今まで部数とは「発行部数」のことで、刷った分はそのまま著者に印税が支払われるのかと思っていました。ところが今回の契約では、実際の「売上部数」で計算するという契約でした。「売上部数」をどうやって計算するのかはなかなか面白くて、「返本率から実売数を計算」するそうです。最近では「売上部数」を基準として出版するところも増えているようです。その方が出版社としてのリスクが低くなって、あまり売れなそうな本でも出版できる機会は増えそうですね。

参考リンク
印税 - Wikipedia
本の印税ってどの位?

AIR解説本の印税は?

ここまでわかったら、後は本当に「印税率」をかけるだけです。最初、「本の印税率はだいたい10%くらいだろう」、少なくとも8%くらいだろうと思っていました。詳しい印税率を明かすことはできませんが、最初に提示された印税率はかなり低いものでした。おそらく小飼弾さんクラスのアマゾンアソシエイト率に負けるくらいでした。まぁこれは駆け出し作家(駆けだした覚えはないのだけれど)としては仕方のないことだと思い、次は印税収入がどのくらいになるのかを計算してみることにしました。
返本率を、書籍として一般的な40%として、1600円で販売した場合を計算してみると…
AIR解説本の印税 = 1600円 * 1200部 * 印税率
となりました。
印税が驚くほど少なくてビックリしました。「プログラミング解説本の著者は本当に大変なんだな」と思うとともに、出版社の方はもっと大変なんだろうなぁと実感しました。

だいたいの印税がわかったので(数値は適当ですが)、次に1ページあたりの単価も求めてみました。
1ページあたりの単価 = 印税 / ページ数
この計算式で1ページあたりの単価が求められます。計算してみたところ、1ページあたりの原稿料がものすごく低いことに気づきました。

次に、1ページ執筆するのにかかる時間で割ってみました。こうすることで、1時間当たりの収入(時給)が計算できます。プログラミング解説本が普通の書籍と違うのは、文字を書くだけではなく、著者が実際にプログラミング環境を構築して、プログラムを作って、動作確認までする必要があるところです。プログラミング作業に時間がかかればかかるほど、執筆のペースも落ちていってしまいます。
1ページに2時間くらいかかるかな?と適当に予測して計算してみたところ…
コンビニアルバイト店員の時給に完敗!!
という面白い結果が出ました。

さて、執筆するかどうか…

印税を計算しているうちに、「なんだー、プログラミング解説本を書いている人たちはこんなに大変なことをしていたのかー」と気づきました。プログラミング解説本の価格の高さを見るたびに、いつも購入をためらったりしていたのですが、「これなら仕方ないなー」と思うようになりました。むしろ、利益もあまり出ないプログラミング解説本を執筆してくれる著者や、出版してくれる出版社に感謝の気持ちさえ覚えました。

「だったら、AIR解説本を書くしかない!」

と決心し、自分がAIR解説本を執筆することに決めました。

自分で書いた本を出版したいという夢(去年叶えた夢と今年叶えた夢参照)を叶えるため、そして周りの人にもAdobe AIRを知ってもらうために、執筆することに決めました。印税のことも計算してみましたが、これは割とどうでも良い部分でした。本当は、大変な執筆作業を決心するために、印税収入を計算してみて、背中を押してもらいたいだけでした(結局、押してもらえるような額ではありませんでしたけど)。自分の夢と、まだ日本では知名度の低いAdobe AIRの魅力を伝えることを優先しました。新しい技術が現れたときに、日本はどうしても遅れがちで、その原因のひとつに言語の壁があります。英語の解説書が揃っていても、なかなかそこまで読もうとしない人がたくさんいます(もちろん、自分もそうなのですが)。そんなときに、最初から日本語の解説書があれば、興味のある人も新しい技術を習得しやすいのではないかと思いました。

「いつまでも後ろを追いかけているだけでなく、日本から発信していかなくてはダメだ!」

そのために、自分がAIR解説本を書こう!と決心しました。


書き終わった後→「Adobe AIRプログラミング入門」執筆しました!

Adobe AIRの魅力を伝えるために…

「周りの人にAdobe AIRの魅力を伝えたい…!」
 ↓↓↓
「んっ、だったらもっと他の方法もあるのではないか?」
たしか、日本でも書籍にクリエイティブ・コモンズライセンスを付けるという新しい試みが実験されていたはず。
クリエイティブ・コモンズの使い勝手試してみては?
クリエイティブ・コモンズに賭けた「コンテンツの未来」
自分が執筆したAIR解説本に、クリエイティブ・コモンズライセンスを付けて発売することはできないのどうだろうか?と思い付き、出版社と交渉してみたのでした。


次回、[AIR解説本の裏話3]クリエイティブ・コモンズライセンスは導入できない?に続きます。