芥川賞くらい簡単に取れるのなら、直木賞か宝くじを狙った方が
2007年07月29日 読書
「真面目に取り組んで小説を書けば、おそらく芥川賞ぐらいは簡単に取れる」と勘違いしている人がいるようなので、芥川賞と直木賞について書いておきます。
自分も2年ちょっと前に、芥川賞って一体どんな賞だろうと思って調べたことがあります。
この時、一番驚いたのは
「芥川賞には、自分で応募することができない!」
ということです。
公募制の新人賞であれば、
「何かの間違いでものすごい大作小説が書けちゃって、その勢いで新人賞をGETして、その後は小説が売れまくっちゃって、印税でウハウハ!!」
なんて、勘違いや妄想するのは自由と言えますが、芥川賞は「自分から応募することができない」ので、たまたま一本ものすごい小説が書けちゃったとしても、芥川賞は受賞できません。
じゃあ、どうやったら芥川賞が受賞できるかというと、文藝春秋|各賞紹介に書いてあります。
この時点で、「一本ものすごい小説が書けちゃった」などというラッキーパンチは通用しないことがわかります。
そして一番肝心なのは、芥川賞はジャンルが限定されているということです。
「純文学短編作品」
しか、選考対象になりません。
「純文学」というジャンルが良くわからない人は、芥川賞を狙うこともできません。
アンモナイトの対数螺旋 - 自己愛者のぼやきこのブログに対して、以下のようなブログもありました。
真面目に取り組んで小説を書けば、おそらく芥川賞ぐらいは簡単に取れるだろうけど、最近の芥川賞は何やら話題性だのバックボーンなどないと受賞出来ないようなので、まあ、それでも結局は何かしらの賞を取れるだろうし、そうじゃない作品なんて書かないだろう。
- heartbreaking. 『真面目に取り組んで小説を書けば、おそらく芥川賞ぐらいは簡単に取れるだろう』 ・・・ハァ?
- ノッフ! - 真面目に取り組んで小説を書けば、おそらく芥川賞ぐらいは簡単に取れるだろう
自分も2年ちょっと前に、芥川賞って一体どんな賞だろうと思って調べたことがあります。
この時、一番驚いたのは
「芥川賞には、自分で応募することができない!」
ということです。
公募制の新人賞であれば、
「何かの間違いでものすごい大作小説が書けちゃって、その勢いで新人賞をGETして、その後は小説が売れまくっちゃって、印税でウハウハ!!」
なんて、勘違いや妄想するのは自由と言えますが、芥川賞は「自分から応募することができない」ので、たまたま一本ものすごい小説が書けちゃったとしても、芥川賞は受賞できません。
じゃあ、どうやったら芥川賞が受賞できるかというと、文藝春秋|各賞紹介に書いてあります。
芥川龍之介賞「自分で応募することができない」ので、まずは各新聞・雑誌に掲載されるだけの実力・知名度を持たないといけません。
芥川龍之介の名を記念して、直木賞と同時に昭和10年に制定された。各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)に発表された純文学短編作品中最も優秀なるものに呈する賞(応募方式ではない)。主に無名もしくは新進作家が対象となる。正賞は懐中時計、副賞は100万円。授賞は年2回。
この時点で、「一本ものすごい小説が書けちゃった」などというラッキーパンチは通用しないことがわかります。
そして一番肝心なのは、芥川賞はジャンルが限定されているということです。
「純文学短編作品」
しか、選考対象になりません。
「純文学」というジャンルが良くわからない人は、芥川賞を狙うこともできません。
芥川賞を取るとどうなるのか?
芥川賞を取ると、その後はウハウハな生活が待っているかというと、そんなことはありません。芥川龍之介賞自体は、「正賞は懐中時計、副賞は100万円」しかもらえないからです。
しかも、芥川賞受賞後に小説が売れまくるかというと、そんなことは保証されていません。
芥川賞受賞者一覧を見て、どのくらい知っている作家、読んだことのある作家がいるでしょうか?
回(受賞年) | 受賞者 | 受賞作 | 掲載誌 |
---|---|---|---|
119(1998E) | 花村萬月 | ゲルマニウムの夜 | 文學界 |
119(1998E) | 藤沢周 | ブエノスアイレス午前零時 | 文藝 |
120(1998L) | 平野啓一郎 | 日蝕 | 新潮 |
121(1999E) | なし | なし | なし |
122(1999L) | 玄月 | 蔭の棲みか | 文學界 |
122(1999L) | 藤野千夜 | 夏の約束 | 群像 |
123(2000E) | 町田康 | きれぎれ | 文學界 |
123(2000E) | 松浦寿輝 | 花腐し | 群像 |
124(2000L) | 青来有一 | 聖水 | 文學界 |
124(2000L) | 堀江敏幸 | 熊の敷石 | 群像 |
125(2001E) | 玄侑宗久 | 中陰の花 | 文學界 |
126(2001L) | 長嶋有 | 猛スピードで母は | 文學界 |
127(2002E) | 吉田修一 | パーク・ライフ | 文學界 |
128(2002L) | 大道珠貴 | しょっぱいドライブ | 文學界 |
129(2003E) | 吉村萬壱 | ハリガネムシ | 文學界 |
130(2003L) | 金原ひとみ | 蛇にピアス | すばる |
130(2003L) | 綿矢りさ | 蹴りたい背中 | 文藝 |
131(2004E) | モブ・ノリオ | 介護入門 | 文學界 |
132(2004L) | 阿部和重 | グランド・フィナーレ | 群像 |
133(2005E) | 中村文則 | 土の中の子供 | 新潮 |
134(2005L) | 絲山秋子 | 沖で待つ | 文學界 |
135(2006E) | 伊藤たかみ | 八月の路上に捨てる | 文學界 |
136(2006L) | 青山七恵 | ひとり日和 | 文藝 |
綿矢りさ、金原ひとみくらいしかわからない人も多いのではないでしょうか?
そもそも、ほとんどの受賞作が「文學界、すばる、文藝、群像、新潮などに掲載された純文学短編小説」なのに、これら掲載誌を知っている人はどれくらいいるのでしょうか?
芥川賞が話題性重視で受賞者を選びたくなる気持ちもわかります。
芥川賞を取ったからといって、その後の生活が保障されているわけではありません。
1年に数人しか生まれない、「純文学短編小説を書く天才」に選ばれたとしても、一般の人はなかなか純文学を買ったり、読んだりしません。
ライトノベルに大敗しているのが現実です。
狙うなら直木賞
芥川賞の兄弟賞と言っても良いのが「直木三十五賞」。直木賞についても、文藝春秋|各賞紹介に載っています。
直木三十五の名を記念して、芥川賞と同時に昭和10年に制定された。 各新聞・雑誌(同人雑誌を含む)あるいは単行本として発表された短編および長編の大衆文芸作品中最も優秀なるものに呈する賞(応募方式ではない)。無名・新進・中堅作家が対象となる。 授賞は年2回。こちらも、芥川賞同様「自分で応募することができない」賞です。
しかし、
「短編および長編の大衆文芸作品」
が対象となっているため、直木賞を受賞すれば、短編純文学小説に限定されていた芥川賞よりも、より一般的に売れる小説を書く才能を認められたことになります。(推理小説やSFは受賞しにくい傾向があり、中堅作家も多く受賞しています)
直木賞受賞者一覧を見てみましょう。
回(受賞年) | 受賞者 | 受賞作 | 掲載誌 |
---|---|---|---|
119(1998E) | 車谷長吉 | 赤目四十八瀧心中未遂 | 文藝春秋 |
120(1998L) | 宮部みゆき | 理由 | 朝日新聞社 |
121(1999E) | 佐藤賢一 | 王妃の離婚 | 集英社 |
121(1999E) | 桐野夏生 | 柔らかな頬 | 講談社 |
122(1999L) | なかにし礼 | 長崎ぶらぶら節 | 文藝春秋 |
123(2000E) | 金城一紀 | GO | 講談社 |
123(2000E) | 船戸与一 | 虹の谷の五月 | 集英社 |
124(2000L) | 重松清 | ビタミンF | 新潮社 |
124(2000L) | 山本文緒 | プラナリア | 文藝春秋 |
125(2001E) | 藤田宜永 | 愛の領分 | 文藝春秋 |
126(2001L) | 山本一力 | あかね空 | 文藝春秋 |
126(2001L) | 唯川恵 | 肩ごしの恋人 | マガジンハウス |
127(2002E) | 乙川優三郎 | 生きる | 文藝春秋 |
128(2002L) | なし | なし | なし |
129(2003E) | 石田衣良 | 4TEEN フォーティーン | 新潮社 |
129(2003E) | 村山由佳 | 星々の舟 | 文藝春秋 |
130(2003L) | 江國香織 | 号泣する準備はできていた | 新潮社 |
130(2003L) | 京極夏彦 | 後巷説百物語 | 角川書店 |
131(2004E) | 奥田英朗 | 空中ブランコ | 文藝春秋 |
131(2004E) | 熊谷達也 | 邂逅の森 | 文藝春秋 |
132(2004L) | 角田光代 | 対岸の彼女 | 文藝春秋 |
133(2005E) | 朱川湊人 | 花まんま | 文藝春秋 |
134(2005L) | 東野圭吾 | 容疑者Xの献身 | 文藝春秋 |
135(2006E) | 三浦しをん | まほろ駅前多田便利軒 | 文藝春秋 |
135(2006E) | 森絵都 | 風に舞いあがるビニールシート | 文藝春秋 |
直木賞受賞作家は、一般の書店でも大量に売っている、身近にも読んでいる人がたくさんいる有名な小説家がたくさんいます。
個人的にも、最近奥田英朗さんの空中ブランコを読みましたが、素晴らしい作品でした。(イン・ザ・プールがとても面白かったので、続編の空中ブランコに辿り着いたら、たまたま直木賞を受賞していたという話ですが)
芥川賞ぐらいは簡単に取れるのなら
「真面目に取り組んで小説を書けば、おそらく芥川賞ぐらいは簡単に取れる」のであれば、もうちょっと頑張って直木賞狙った方がいいんじゃない?と反射的に思ってしまいました。芥川賞も、直木賞も、頑張ったところで簡単に取れるわけないんだから。
宝くじ買って1億円以上当たった人の方が、はるかに多いという現実に気付いた方が良いかもしれません。
小説家になる! 芥川賞・直木賞だって狙える12講 中条 省平 筑摩書房 2006-11 by [Z]ZAPAnetサーチ2.0 |